7日午前2時ごろ、京都市北区大将軍川端町のかつら製造会社「八木かつら」から出火、同4時42分に鎮火したが事業所や工場などをほぼ全焼した。同社会長井上一夫さん(76)が顔や手にやけどを負い、病院に搬送された。同社は「必殺仕事人シリーズ」などのテレビドラマ、映画の時代劇に使われるかつらの製造を手掛ける老舗。材料や工具などもすべて焼失したため、芸能界への影響も避けられないとみられている。

 京都府警北署によると7日午前1時59分、八木かつらの近隣の住民から「パチパチと火が燃えている音がする」と119番通報があった。現場はJR京都駅から北西へ約5キロ。昔ながらの2階建て木造家屋が建ち並ぶ閑静な住宅街。火は南側の住宅の屋根にも燃え移った。京都市北消防署などから20台の消防車が出動し、約100人の消防士らが消火活動にあたり、午前4時42分に鎮火した。

 八木かつらの2階建て建物320平方メートルのうち、280平方メートルが焼失。1階を中心に、かつらを製造する工場や事業所などがほぼ全焼した。かつらを製造する職人は約30人で、6日の午後8時には全員帰宅していたが、会長の井上さんは所用で深夜に会社に戻って火災に巻き込まれた。井上さんは顔や腕、手にやけどを負うなどして府内の病院に救急搬送された。関係者によると命に別条はないが、重傷で治療を受けているという。

 八木かつらは1927年(昭2)創業で、テレビ、映画業界では知らない人はいない老舗。これまでドラマの「必殺シリーズ」「鬼平犯科帳」「剣客商売」、映画では「武士の一分」「たそがれ清兵衛」「ゲゲゲの鬼太郎」、舞台では「アマデウス」「エリザべート」などで数多くのかつらを手掛けてきた。「必殺シリーズ」で俳優京本政樹(52)が演じた「組紐屋の竜」のかつらも同社によるもの。7日午前10時ごろ、担当の職人から連絡を受けた京本は「火災のことを知って固まりました。ショックですよ。大変な映画界の損失です」とコメント。京本のかつらは担当の職人が自宅に持ち帰っており火災を免れたが、30年近い付き合いという老舗の災難に声も沈みがちだった。

 関係者によると、現時点でも多くのドラマ、映画の発注を受けているという。火災でかつらの材料や工具などもすべて失ったことから、今後の営業再開などについても全く未定。井上さんも当面は入院を余儀なくされそうで、演劇、テレビ、映画界への影響は避けられないとみられる。