来月8日公開の台湾映画「ハーバー・クライシス〈湾岸危機〉」(ツァイ・ユエシュン監督)にただ1人参加している日本人俳優がいる。ディーン・フジオカ(31)。北京語と英語を使いこなし、中華圏を中心に活躍する国際俳優だ。来年公開予定の映画「I

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 Ichihashi~逮捕されるまで~」では主演と初監督も務めた実力派。今、ディーンといえばロンドン五輪に出場したやり投げの「元気」だが、フジオカも世界で頑張っている。

 台湾の超人気ドラマを映画化した話題作に主要キャストの1人、捜査官リー・ジィヨン役で出演した。日本公開用に収録したアフレコでは自らの役を日本語で吹き替えた。05年から台北で暮らし、「海外にいる方が圧倒的に多い」だけに、久々の日本語は「ちょっと時間がかかりました。普段使っていないと言葉が出てこない」と笑った。

 米国の大学を卒業後、3カ月かけてアジア各国を回った。香港のクラブで地元のファッション誌に声をかけられ、突然モデルの道が開かれた。雑誌からCM、ドラマ、MV、映画と仕事が広がり、活動の場も香港、台湾、上海、マレーシア…とアジアのボーダーレスを実感。世界的に通用する名にするべく、フジオカの前に「ディーン」をつけた。

 31歳。初めて日本で参加した仕事が映画「I

 am

 Ichihashi~逮捕されるまで~」だ。07年に千葉県市川市で発生した英国人女性講師殺人事件を描いた作品の主演と初監督を務めた。「(事件発生した)当時は台湾にいて、僕は正直知らなかったんですが、こういうプロジェクトがあるという話をいただいた。殺人犯の役は以前からやってみたいと思っていました」。世間をにぎわせた人物だが、「俳優として、演じることへの抵抗はなかった」と話す。

 今後は「日本はGMT(グリニッジ標準時)でいうと+9。台湾や香港、中国は+8。ジャカルタやバンコクは+7。この+7から+9の時間軸を、縦に移動しながらキャリアを構築していきたい」。時差を行き来する国際派らしい考え方だ。「アジアの中で、アジア人がやる、アジア人のためのエンターテインメントをやっていけたら、本当に幸せで、意味のあることだと思っています」。

 五輪で活躍したやり投げのディーン元気(20)に続き、フジオカもアジアのエンターテインメント界での活躍を誓う。

 ◆ディーン・フジオカ

 本名・藤岡竜雄。1980年(昭55)8月19日、福島県生まれ。高校卒業後、米シアトルの大学に留学。香港でモデルとして活動後、映画「八月的故事」に主演し俳優デビュー。05年から台湾に拠点を移し、映画「ロードレス・トラベル」、ドラマ「ホントの恋の見つけかた」などに出演。音楽制作も手掛け、作詞、作曲、プロデュースも行う。180センチ、60キロ。血液型A。