【グラナダ(スペイン)13日=田口潤】「北島超え」が見えた。競泳のリオデジャネイロ五輪代表の萩野公介(21=東洋大)が出場4種目でのメダル獲得を視野に入れた。萩野ら競泳日本代表の一部は標高2320メートルの当地で高地合宿を敢行中。この日までの練習で萩野は好記録を連発し、約3週間後に迫る大舞台に自信をつかんだ。1大会で4個のメダルとなれば、北島康介らを抜いて日本人選手最多になる。

 3000メートル級の山々に囲まれたスペイン・グラナダにあるプールに衝撃が走った。400メートル個人メドレーの練習。バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、自由形と100メートルずつ泳ぐ。合計タイムは3分54秒10。フェルプスの4分3秒84の世界記録を大きく上回った。通しのレースと比較できないが、疲労困憊(こんぱい)の中、次元の違うタイムだった。

 200、400メートル個人メドレーは今季世界ランク1位。特に競技初日の8月6日の400メートル個人メドレーは世界選手権連覇の瀬戸との一騎打ちが予想される。「強い気持ちを持って楽しく泳ぐ。300メートルまでトップだったら、勝てる」。ロクテ、フェルプスと世界のスターと競う200メートル個人メドレーは「もちろん勝つつもりでいく」。充実した高地合宿も自信になり、堂々の2冠を宣言した。

 個人メドレーだけではない。日本記録を持つ200メートル自由形の今季世界ランクは12年ロンドン大会2冠の孫楊(中国)以外は団子状態。800メートルリレーも今大会は64年東京以来52年ぶりのメダルチャンスがある。1大会で4個のメダルとなれば日本人最多。北島康介らを上回るが「世界にはもっとメダルを取った人がいるし、メダルを取ってもそこに金がないと意味がない」と、世界基準を貫いた。

 高校3年で挑んだ前回ロンドンでは怖い者なしの勢いも加わり、楽しみながら400メートル個人メドレーで銅メダルを獲得。この4年間は昨年の右肘骨折など順風満帆ではなかった。勢いではなく試行錯誤しながらたどり着いた2度目の五輪。ほぼ完璧な状態で残り3週間のラストスパートに入った。「いろいろあったからこそ今がある。4年前と違う楽しみが今はあります」。戦闘態勢は整った。○…スペイン高地合宿はゲンのいい場所でもある。スペイン南部グラナダから車で1時間。標高2320メートルのシエラネバダにある国立のスポーツ施設。北島が世界新で2冠を達成した03年世界選手権、初の五輪2冠を達成した04年アテネ五輪前にも合宿を張っている。昨年も同所で合宿した星と渡部が世界選手権で金メダルを獲得した。萩野を指導する平井コーチは「過去の経験を生かしてミックスしている」と計画に自信を持っていた。