ハリル流改革は続く。5-1で快勝したウズベキスタン戦から一夜明け、日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督(62)は1日、東京・本郷のJFAハウスでスタッフミーティングを行った。前夜には試合終了直後の選手に、プレーデータを示して今後の意識改革を求めた。世界に通用する肉体づくりのために、フィジカルトレーニングのメニューなども配布。1日たりともムダにせず、日本代表の大改造を進めていく。

 快勝に酔いしれる間もなく、仕事を再開した。1日、東京・本郷のJFAハウス。ハリルホジッチ監督は正午すぎにビルに入ると、チームスタッフとともに4時間30分、缶詰め状態で打ち合わせなどを行った。

 これに先立ち、すでに今後への布石も打っていた。3月31日のウズベキスタン戦終了後。ハリルホジッチ監督は、通常は試合会場で解散する選手たちを宿舎まで伴い、ミーティングを行った。そこで同27日のチュニジア戦との2試合のプレーデータをもとに、選手たちに“宿題”を課した。

 選手たちに示されたのは、50%を割り込むポゼッション(ボール保持)率の低さだった。一見ネガティブな数字。だが魔術師の解釈は全く違う。「ゆっくりボールを回していないということ。素早くボールを回せば、ポゼッション率は必然的に下がる」と教え子たちのプレーを評価した。

 ポゼッション率は、ボールを保持している時間で割り出す。これが高ければ、一般的には試合の主導権を握れていると理解されるが、ハリルホジッチ監督に言わせれば「攻撃にムダな時間がかかってしまっている」ということになる。

 ポゼッション率と引き換えに、日本代表は1、2タッチのパスの比率、パスの球速、縦パスの比率、そして運動量を増やした。それこそが、攻撃のスピードアップをはかる指揮官が求めるものだった。そして特に国内組に対して「クラブに戻っても、こういう意識でやってほしい」と説いた。

 合宿の練習の中でも、球際の強さが必要だとし、普段から意識してプレーすべきだと強調していた。個々の肉体改造も求める。解散前には一部選手に、週2回程度のフィジカルトレーニングメニューが配布された。食生活や休息のとり方についても触れた詳細なもので、他の選手にも追って送付される。さらにはJ各クラブのドクターなどにも、同様のメニューを送る。

 代表選手がJクラブに戻って、意識を変えて練習に取り組めば、他の選手も必ずそれに気づく。霜田技術委員長は合宿中から「監督の持っているノウハウを、各クラブと共有できれば、日本全体のレベルアップにもつながる」と話していた。各地に戻った国内組は、ハリル改革の“特使”としての役割も負う。【塩畑大輔】

<ハリル流改革>

 ◆パワーポイントを駆使 3月19日、体制初戦のチュニジア戦と、ウズベキスタン戦のメンバーを発表。31人に加え、バックアップメンバーまで選んだ。プレゼン用ソフトのパワーポイントを使ってプレゼンした。

 ◆先頭でランニング 同23日、大分県内で初の代表合宿がスタート。監督自らランニングを先頭で引っ張る。さらに26分間で練習が終わり、選手や周囲を驚かせた。

 ◆ダメ出しビデオ 合宿では個人、グループ、チーム全体とミーティングを重ねた。昨年のW杯での日本代表のプレーVTRを見せて問題点を挙げ、練習で改善のためのメニューを課した。

 ◆堅守速攻へシフト 従来の日本代表はボールをつないで相手を崩す「遅攻」が主だったが、指揮官は素早く縦に展開する速攻を要求。ウズベキスタン戦の後半、カウンター攻撃でペースを握り、4得点を挙げた。