FIFAランク4位のなでしこジャパンが、同6位のイングランドを下し、2大会連続の決勝進出を果たした。

 イングランドのセンターバック、DFローラ・バセット(31)にとってまさに悪夢だった。後半ロスタイム。川澄の右クロスに必死に右足を伸ばし、クリアを試みた。だがボールはクロスバーに当たってゴールの内側ではねた。

 バセットはゴールインを告げた主審に向かって両手を挙げて不満そうな表情を見せた後、がっくり肩を落とした。そして終了の笛が鳴ると号泣。仲間やサンプソン監督に支えられながらピッチを去ってもおえつは止まらず、過呼吸の症状で医務室に運ばれた。

 だがバセットを責める人間は誰もいなかった。サンプソン監督は「バセットは打ちひしがれていたが、彼女がいなければ準決勝には進めていなかった。試合を通じてチームは固いきずなで結ばれ、選手たちは生涯の友になったはずだ」とたたえた。

 イングランドは後半は前線からの激しいプレスとロングボール主体の攻撃で日本を存分に苦しめた。前回大会も2-0で勝つなど過去2勝2分けと相性が良かった日本に初めて敗れ、初の決勝進出を逃したが、同監督は胸を張った。「日本は世界チャンピオンだ。今夜、その理由が分かった。試合の中で何が起きても踏ん張るすべを見つけてしまう」と相手を認めた上で、「受け入れがたい敗戦だが、選手たちには英雄として国に帰ってほしい。我々のように日本を苦しめたチームは見たことがない。イングランドはW杯を勝ち取ったに値した」と話した。

 ツイッターなどソーシャルメディアにもバセットをなぐさめるコメントが相次いだ。かつて名古屋でもプレーした元イングランド代表FWリネカー氏は「かわいそうなバセット。敗退は痛みを伴うものだが、イングランド女子の素晴らしい奮闘だった。顔を上げて欲しい」とエールを送っていた。

 ◆ローラ・バセット 1983年8月2日、英ヌニートン生まれ。DF。コベントリーやバーミンガムを経て、現在は女子イングランド1部の強豪ノッツカウンティーでプレーする。昨年はチェルシーで大儀見優季とチームメートだった。各年代のイングランド代表に選出され、02年U-19女子W杯では8強入り。A代表は03年2月のイタリア戦でデビューし、通算54試合2得点。