<J1:名古屋2-0浦和>◇第2節◇15日◇埼玉

 ピクシーはスーツ姿でベンチにいた。鍛え上げた選手が、自身の現役時代に匹敵する見事なサッカーをピッチに描き出すのを見つめた。アジア王者を敵地で圧倒。「私の人生で、ずっと心の中に残る試合だ」。輝かしいキャリアに、監督初勝利を書き加えた。「今日は素晴らしい内容だった。テレビで観戦した方々にも、魅力は伝わったはずだ」と誇らしげだ。

 前半14分、就任以来意識付けしてきたサイドからのクロスを、FWヨンセンが頭で決めて先制。後半23分の追加点は、MF小川がリスタートを焦った相手GKの不用意なパスに詰め、蹴り込んだ。小川は「いつも通りプレスを掛けにいっただけ」と言う。徹底した攻撃意識と、労を惜しまず全員で走り抜く姿勢を証明する2発。「組織的で美しく、モダンなフットボール。今日の試合では選手が私の与えたことをやってくれた」。これぞピクシーフットボールの90分だった。

 J最高のスターだった新米監督はチーム一丸の姿勢を、身をもって示して古巣をまとめてきた。J開幕前最後の練習試合となった1日の横浜戦(日産ス)では、前日に東京都内で監督会議などJ公式行事があったのに日帰りで愛知に戻り、翌日チームと行動をともにした。J開幕戦では「1つになろう」と自ら発案し、試合開始前にベンチ入り選手、スタッフも含め全員で大きな円陣を組んだ。「我々はファミリー」。結束による1勝を喜んだ。

 試合後、観戦に訪れた恩師のオシム監督に「今日の勝利が最後にならないように」とオシム節で祝福された。尊敬する恩師との対面には「とてもいい試合だったと言ってもらえたし、何より元気な姿が見られてうれしかった。次は名古屋まで見に来てくれると約束してもらったんだ」。埼玉スタジアムで浦和に勝ったのはクラブ史上初。リーグ制覇がなく「万年中位」と呼ばれた名古屋の歴史が、ピクシーに率いられ変わり始めている。【八反誠】