指揮官の「傷に塩作戦」で、モンテの新戦力が復活した。J1山形小林伸二監督(49)が、不振を極めていたMF増田誓志(24)に、あえてボランチ失格を宣告し、発奮材料とさせてよみがえらせた。最後の調整試合となった仙台戦(2月27日)で、増田は指揮官を見返した。失いかけていた自信を取り戻し、6日の開幕戦(対湘南)に臨む。

 仙台戦の前のミーティング。開幕直結のメンバーが組まれた先発発表に、増田の名前はなかった。戦術を説明し解散した後、小林監督は増田を呼んだ。キャンプ中の練習試合で、増田の攻撃偏重ぶりが編集された映像を見せながら、耳に痛い言葉を並べた。

 小林監督「いろんな考えがあるけど、ボランチに大切なのは守備だと思う。(鹿島時代に多かった)途中出場ならイチかバチかの動きでいいけど、先発で同じ考えでプレーしてたら、強い、弱いに関係なく出られるチームはない。だから鹿島で出られないんだよ」。

 恩師の鵬翔高(宮崎)松崎博美監督(59)が「何でもできるうまい子だけど、気持ちが繊細」と評する増田に、ダメ出しして奮起させるのは、かなりのかけ。だが、攻撃面での期待を意識しすぎていた増田は「攻める意識が強すぎてチームのバランスを崩してた。やっと(山形の)戦術が分かってきた」と、途中出場した仙台戦後に明るい表情を見せた。必要以上に肩に掛けていた重しが取れた。

 半月前、雲仙キャンプで増田は、シャイな性格とコンディション不良からチームに融合できず、自信を失っていた。だが開幕に向けて上向き、指揮官も「計算できる」と認める状態になった。開幕まであと4日。「先発を目指しますよ」という、増田の目が光っていた。【山崎安昭】