<J1:G大阪3-2神戸>◇第4節◇13日◇万博

 ド派手にサヨナラ!

 ドイツ1部Bミュンヘンへ移籍するG大阪MF宇佐美貴史(19)が、Jラストマッチの神戸戦で全3得点に絡む大活躍を見せた。前半46分に先制点の起点となると、後半18分にFWイ・グノ(26)のパスを流し込む正真正銘の惜別ゴール。2-1の同34分には絶妙なパスでイ・グノの得点をアシストし、勝利に貢献した。「ガンバの至宝」は今日14日にドイツへと出発し、欧州で新たなステージに立つ。

 至宝と呼ばれるだけあって役者が違った。「G大阪の宇佐美」が、最後に大きな置きみやげを残した。前半46分に中央で起点となり先制。そして後半18分にはゴール前へ切れ込むイ・グノに合わせ、懸命に走った。GKとDFを引き付けながら送られてきたパスを、右足で丁寧に流し込む。希望していた「惜別弾」を決めて、何度も胸のG大阪エンブレムにキスをした。

 宇佐美

 グノが優しかった。走りながら「最終戦やから空気読んでくれよ」って思ってたら、うまくパスしてくれた。グノに「最終やなかったらシュートしてたやろ」て聞いたら「ウン」て言ってましたけどね。楽しみながら、かみしめながらプレーしました。

 感謝の気持ちは、16分後にお返しした。右サイドでMF二川からボールを受けると、すかさずゴール前へ早めのパス。「恩返しということで」とイ・グノの3点目につなげた。1得点1アシスト、そして勝ち点3を見事にゲットした。

 J最後の舞台は、18年見てきた万博だった。1歳の時、母美紀さん(50)の膝の上で試合を見た記憶がある。「なんか覚えているんですよね、ガンバの選手が動いているのを」。物心がつくころには、最前列にかじりついていた。「松波」「礒貝」などの手製横断幕を持参する“タカシくん”は、周囲のサポーターにかわいがられた。G大阪から欧州移籍した6人すべてがユース出身。その中でも「最高傑作」と言われる男は、サポーターが育てた最高の選手でもあった。

 試合前の入場は、サプライズで両親が一緒だった。スタンドでは2人の兄と、ともにドイツへ渡る蘭夫人(19)が観戦。最後は「宇佐美CWC(クラブW杯)で会おう」の横断幕が掲げられた場内を1周し、涙した。向かう先はブンデス優勝22度、欧州を4度制覇した強豪Bミュンヘン。世界的プレーヤーとの競争が待っているが「G大阪のサポーターであることを忘れずに、努力し続けます」と宣言した。記憶と記録に残るラストゲーム。涙が乾いた宇佐美の目は、もう世界へと向いていた。【近間康隆】