<天皇杯:藤枝MYFC3-2アルテリーヴォ和歌山>◇1日◇1回戦◇和歌山・桃源郷

 藤枝MYFC(静岡)がアルテリーヴォ和歌山を延長戦の末に破り、初出場で初勝利を挙げた。前半に0-2とされながらも後半にDF藤牧祥吾(24)の2得点で同点。延長前半にMF村瀬勇太(23)が勝ち越しゴールを決めて、関西1部リーグの相手にJFLの意地を見せつけた。7日の2回戦ではJ1清水と戦う。

 藤枝MYFC・村瀬の右足が下克上を許さなかった。延長前半7分、アルテリーヴォ和歌山のクリアを拾って右サイドを駆け上がると「コースが空いてたので」と、角度の浅いところからシュート。相手GKをかすめて左サイドネットに転がった。「入るとは思わなかった」と自ら驚く勝ち越しゴール。その時点で右足がつったものの、残り23分間も走り続け、初勝利の瞬間を迎えた。体中から噴き出る汗が、苦しい試合を物語っていた。

 格下の勝利が多い大会らしい前半だった。序盤のチャンスを逃し続けると、徐々に相手にボールを回される。26分、37分といいようにゴールを決められた。

 2点ビハインドから、DF藤牧が流れを引き戻した。後半35分に左からのクロスを頭で決めて反撃開始。3分後には、右FKを頭で合わせた後のこぼれ球を右足で押し込んだ。県大会決勝でも唯一の得点を挙げた元FWが、勝負強さを発揮した。「負けたら静岡に帰れないと思った」。はるばる駆けつけたサポーターと勝利を喜んだ。

 斉藤俊秀兼任監督(40)は「3人の交代選手が素晴らしい活躍をしてくれた」と、裏のスペースへ走り続けて相手の体力を奪っての3得点と説明。一丸の勝利を強調した。

 そして、いよいよ次戦は古巣清水との対戦だ。「県大会から僅差で勝ってきた勢いをぶつけたい。思い出を作ってほしい気持ちはない」と、濃い経験を重ねるチームに手応えは十分だ。藤牧も「同世代の選手が多いので楽しみ」と、7日を心待ちにした。立場は変わって、今度は「下克上の大会」にする番だ。【石原正二郎】