【モスクワ8日=八反誠】ロシア1部CSKAモスクワのMF本田圭佑(25)が、ビッグクラブ移籍へ向け「いいヤツだけど、使えない」と、オランダ人代理人を“クビ”にしていたことが分かった。右膝を手術したため現在は日本代表からも離脱中。それでも患部は回復に向かい、早ければ18日のリーグ、ルビン戦(ホーム)で実戦復帰する。来るべき節目に備える本田は、独特の表現で日刊スポーツだけに本音を激白した。

 モスクワは日中も氷点下だった。吐く息は一瞬で真っ白になる。そんな極寒の地で本田が口を開いた。練習後、質問に反応し車の後部座席のウインドーが開く。移籍について、言えることは1つだけと断った上で衝撃の事実を明かした。

 VVV時代からの代理人、ケース・プルーフスマ・ジュニア氏との契約を9月末の満了をもって解消したという。事実上の“クビ”。メディアで取りざたされる同代理人の発言は、意味を持たなくなっていた。理由は単純だった。「いいヤツだけど、使えない」

 昨年W杯南アフリカ大会での大ブレーク後3度移籍ウインドー(期間)が開いた。だが、同代理人のもとでは目標とするビッグクラブ移籍は実現せず「使えない」という判断となったようだ。

 本田を高く評価するCSKA側は安売りはしない方針で、次の移籍先をビッグクラブに限定。ハードルは高い。現在の移籍市場で代理人なしに大型契約をまとめるのは不可能に近い。ただ、そんなリスクを負っても、待つのではなく自らの生き方を貫く決断として勝負に出た。今後は同代理人に縛られず、より幅広いオファーを待つことができる。この冬の移籍市場が一気に動く可能性も出てきた。

 ただ、現状では移籍にマイナスに働く要素もある。練習後の本田の右膝には氷袋が巻かれていた。これが、けがとは無縁だった男のもう1つの現実だ。初の大きな故障とどう向き合ったのか。笑みを浮かべ、こう言い放った。「もちろん意図してけがしようとする人はいない。でも、オレにとってはけがしたことが成功だった。けがしたことで世界一に近づいたと思っている」

 その目は世界の頂点だけを見すえていた。通常、故障した選手から「成功」の2文字が出るとすれば、それは無事ピッチに復帰しプレーした後に語られるはず。だが、本田はどこまでも本田だった。「オレはいいプレーをする前から、どうすれば成功できるか自分で分かっている。だから今回のけがも、もう成功だって言い切れる。例えば『3+3=6』という数式がある。今回のケガで3に何を足したら6になるのか?

 それが3であるということがはっきり分かった」

 “けがの功名”なのか、足りないものがはっきりとしたと言い切る。では、本田が言う数式の残りの「3」、つまり世界一に向け、埋めなければならない部分は一体何なのか。「オレがああです、こうですと説明することではない。みんながオレの出す結果を見て判断してくれるのが一番。それがファンの楽しみになると思うし、記者の人の仕事でもある。でも、大丈夫。みんなをもっともっと楽しませるから」

 最後は復帰を待て-という本田流のメッセージ。けがでつまずいたことで、世界の頂を視界にとらえたと言い切る男は、もうすぐピッチに戻ってくる。