昨夏の世界選手権代表、高橋英輝(えいき、23=富士通)が、五輪初出場を決めた。世界記録保持者鈴木雄介(28)が欠場する中、1時間18分26秒で大会連覇。日本陸連の派遣設定記録1時間20分12秒の突破と優勝を手にしてリオ行きが内定した。けがでリオ絶望の鈴木にかわり「メダルを目指して頑張ります」と誓った。2位は藤沢勇(28=ALSOK)、3位は荒井広宙(27=自衛隊)だった。

 高橋が、16キロ地点でペースを上げた。じりじりと引き離された2位藤沢の自分を叱咤(しった)する「うおー!」という叫び声を聞いて「まだあきらめていない。気は抜けない」。自慢のスピードを生かし、リードを保った。ゴールテープを両手でつかんで「ヨッシャー」と雄たけび。初の五輪行きを決めて「雄介さんの分まで、メダルを目標に頑張りたい」と宣言した。

 鈴木と同じ富士通所属で社会人1年目。ラーメン店で深夜アルバイトをして平気で朝食を抜いた岩手大時代から、世界トップと練習する環境の変化に戸惑った。昨夏の世界選手権は失意の47位。その2日後、同じレースで途中棄権した鈴木が北京市内の小学校訪問で明るく振る舞う姿を見た。「雄介さんは強い選手。僕は切り替えがうまくない」。世界と戦ってきたタフな精神力に刺激を受けた。

 鈴木不在のリオは、昨年世界ランク4位の高橋に期待がかかる。この日は鈴木の後ろについてラストで逆転するパターンから脱却し、自分でレースを組み立てて勝った。アイドル好きだが、最近は趣味の時間も制限。「五輪は夢だったので楽しみにしたい」とリオを見据えた。【益田一弘】

 ◆高橋英輝(たかはし・えいき)1992年(平4)11月19日、岩手・花巻市生まれ。宮野目小でサッカー、宮野目中でソフトテニス部。花巻北高で陸上を始めて2年から競歩。岩手大を経て、15年4月に富士通入社。同12月の長崎陸協競歩大会では1万メートル競歩で、38分1秒49の日本記録を樹立。好物はオムライスと焼き肉。175センチ、58キロ。

 ◆競歩 ルールは(1)両足が同時に地面を離れてはならない(2)前足は接地の瞬間から垂直の位置になるまで真っすぐに伸びていなければならないの2点。五輪種目は男子が20キロと50キロ、女子が20キロ。世界大会のメダルは15年世界選手権50キロ銅の谷井孝行のみ。谷井はリオ五輪代表に内定。

 ◆競歩男子20キロリオ五輪への道 最大派遣人数は3人。今回の日本選手権と3月の全日本能美大会が選考レースで、日本人1位で、派遣設定記録(1時間20分12秒)を満たした者が代表に内定する。高橋の内定によって残るは最大2枠。両大会の日本人3位以内で、派遣設定記録を満たした者から優先して選考される。