日本マラソン界の「レジェンド」瀬古利彦総監督(60)率いるDeNAランニングクラブが25日、東京渋谷区のオフィスで4月に設立したアカデミー(U-15・U-12)の経過報告会を開いた。

 冒頭、瀬古総監督は「リオ五輪のマラソンは惨憺(さんたん)たる結果でした。私が悪い訳ではなく、10年も前からこうなることは予想していた。それでも五輪のテレビ視聴率の1番は男子マラソン、3番が女子マラソン。ファンも企業も見向きもしなくなる前に、(マラソン界の)OBとして手を打たないといけない」と危機感をあらわにした。

 男子の日本記録(高岡寿成=2時間6分16秒)は02年以来14年、女子(野口みずき=2時間19分12秒)は05年以来11年も破られていない。「日本記録は夢のような話。子どもたちの性格なのか環境なのか、練習ができない。楽な方に行っている。『瀬古さんは古い、今は科学的トレーニングだ』って言われるけど、1年前にケニアに行ったら何も科学的トレーニングなんてやっていなかった。高地に住んで、欧米コーチの練習方法を教わり、規則正しい生活ですごい練習量をやっている」。そんな瀬古監督が未来を見据え、「元気な体力のある子どもたちをつくっていく」と立ち上げたのがアカデミーだ。

 現在、セレクションで選ばれた中学1年生の15人が週に2回ペースで、田幸寛史ヘッドコーチのもと練習を積んでいる。参加者は陸上部以外にバスケットボール部、サッカー部、ハンドボール部、さらには「文科系」の合唱部もいるという。目に見える形の成果はまだないが、田幸ヘッドは「長い目で育てていく。中学生世代には、基礎体力を養うことと心の刺激を中心にトレーニングを考えている」と現状を説明した。

 また、外部協力者としてテクニカルダイレクターを務める、東海大陸上部・長距離駅伝監督の両角速氏は「経験豊富なスタッフのもと、いろんな取り組みをしている。体を動かすのは気持ちだったり、思いなので」。長野・佐久長聖高から多くのトップ選手を育てた経験をベースに、自らのアイデアも落とし込んでいる。

 DeNAランニングクラブは今後、来春の新規メンバー(男子新中学1年)の選考会を12月18日(東京・世田谷陸上競技場)、1月29日(東海大湘南キャンパス)に予定する。将来のU-18立ち上げも視野に入れつつ、「マラソン・ニッポン」の復活に向けた活動を広げていく考えだ。