「越後のボルト」が国際舞台でデビューする。陸上男子200メートルで昨年の全国中学総体陸上とジュニア五輪の2冠に輝いた稲毛碧(あおい、東京学館新潟1年)がアジアユース陸上選手権(20~23日、タイ・バンコク)に出場する。自身初の海外レースで、五輪の100メートルと200メートルで3大会連続金メダルのウサイン・ボルト(30)を尊敬する大器は、将来の世界での活躍を見据え、まず同世代のアジア王者を目指す。

 陸上日本代表が着用するジャージー「サンライズレッド」を着込んだ稲毛は、練習から持ち前の大きなストライドでトラックを走り抜ける。「このジャージーを着ると、気合が入ります」。日本陸連からの支給品をさっそく練習着として使用。大会に合わせてテンションを上げている。

 アジアユースには200メートルで代表に選出された。新潟柳都中3年だった昨年、全国中学総体、ジュニア五輪で優勝した得意種目だ。国際大会は初体験だが、「日本とは違う環境で走れるのが楽しみ。速い外国人選手と対戦できると思うとワクワクする」と気後れもプレッシャーもない。あるのは「世界で活躍する選手になりたい」という、夢へのスタートを切る喜びだ。

 「ボルトのように勝ち続けたい。アジアユースはそのための通過点」と言い切る。100メートルと200メートルの世界記録保持者で、五輪2種目3連覇の世界最速男は憧れの存在。ビデオなどでレースを繰り返し見ている。足の接地の仕方なども参考にしてきた。稲毛も181センチと同世代では恵まれた体格の持ち主。大きなストライドはボルトと同じ流れの荒々しさがある。

 東京学館新潟の田村和宏監督(38)は「まだ粗削り。体力もついていない。本能的に走っている」と言う。そして「その状態で中学トップの座についた。まだまだ伸びる」と潜在能力の高さを感じている。稲毛はアジアユースについて「記録より結果が大切」と断言。「勝つために行く。それが将来につながる」。日の丸を背負って臨む初戦。名刺代わりに表彰台の最上段に立つ。【斎藤慎一郎】

 ◆稲毛碧(いなげ・あおい)2001年(平13)4月6日生まれ、新潟市出身。栄小6年で陸上を始める。新潟柳都中では部活動と並行して新潟アルビレックスランニングクラブに所属。3年時に岩手国体少年男子B(高校1年と中学3年)100メートルで8位入賞。自己ベストは100メートルが10秒88、200メートルは昨年の全国中学総体の優勝記録21秒89。家族は両親。181センチ、64キロ。血液型A。