【6月前半の陸上競技展望・日本選手権編その1】

 トラックシーズン前半戦のハイライトである日本選手権が行われる。ロンドン五輪最終選考会でもあり、五輪A標準突破選手が優勝すればその場で代表に内定するシステム。最終日翌日(11日)にはリレー種目を除く代表選手が全員発表される。

 男子ハンマー投げの室伏広治(37=ミズノ)は大学3年だった1995年から国内無敗を続けている。日本選手権は前人未到の17連勝。その連勝を18と伸ばすのは確実で、昨年の世界陸上優勝ですでに五輪代表にも内定している(マラソン・競歩以外の内定者は室伏1人)。

 昨年は日本選手権の77メートル01のから、世界陸上の81メートル24へとピークを上げることに成功した。年齢的に今季は、昨年以上にピーキングの精度を高めてくるだろう。記録的な部分よりも、五輪本番に向けて室伏がどんな手応えを得られるかが焦点となる。

 代表争いのレベルが高いのは男子やり投げ。今年4月にディーン元気(20=早大)が84メートル28と、昨年のテグ世界陸上4位相当の快記録をマークした。2009年のベルリン世界陸上銅メダルの村上幸史(32=スズキ浜松AC)と激突する。村上はこの種目12連勝中。やすやすと王座を渡さないはず。この2人がA標準突破者。順当に1、2位を占めれば揃って代表入りするだろう。

 福島千里(23=北海道ハイテクAC)は100メートルと200メートルで2年連続2冠に挑む。春先は記録的にはいまひとつだったが、靴底の硬い新スパイクを履きこなすことができなかったことがその一因。最後の試合から1カ月の調整期間があった。昨年までのスパイクに戻すことも含め、対策が進んでいるはず。両種目とも日本新記録も期待できる。

 日本最速を決める男子100メートルは江里口匡史(23=大阪ガス)が4連勝に挑戦する。風などの気象コンディションに恵まれれば10秒0台も見込めそうだ。4月に10秒08と好調だった山縣亮太(19=慶大)は5月に右大腿を故障し、関東学生対校を欠場した。山縣が4月の状態に回復していれば江里口と好勝負を展開できる。

 男子は200メートルで高平慎士(27=富士通)ら3人と400メートルの金丸祐三(24=大塚製薬)、400メートルハードルで岸本鷹幸(22=法大)ら3人と棒高跳びの沢野大地(31=富士通)、女子では400メートルハードルの久保倉里美(30=新潟アルビレックスRC)とやり投げの海老原有希(26=スズキ浜松AC)がすでにA標準を破っている。優勝すれば五輪代表に内定するが、五輪入賞を狙えるレベルの記録も期待したい。【6月前半の主な陸上競技大会】6月2、3日:日本選手権混成(長野)6月8~10日:日本選手権(大阪・長居)