<陸上:ダイヤモンドリーグ第11戦:アスレティッシマ>◇23日◇ローザンヌ

 男子走り高跳びはロンドン五輪銅メダルのムタズ・エサ・バルシム(21=カタール)が2メートル39のアジアタイ記録、今季世界最高タイ記録で優勝。金メダリストのイワン・ウホフ(26=ロシア)を破った。

 バルシムは2010年の世界ジュニア選手権優勝者で、189センチ、65キロのスリムな体型に強靱なバネを持つ黒人選手。「走り高跳びをやるために生まれてきた」と日本の跳躍関係者も舌を巻く逸材である。昨年のアジア選手権(神戸)に2メートル35で優勝すると、今年2月に室内で2メートル37を跳んだ。

 しかし、屋外シーズンは地元のダイヤモンドリーグ・ドーハ大会(5月)を欠場するなど、目立った活躍がなく、ロンドン五輪も優勝争いに加われなかった。「今日はグレートだ。4月、5月、6月とケガをしていたので、ここまで跳べるようになるとは思っていなかった」と、興奮を隠せない様子で話した。

 アラブ諸国がアフリカ人選手を自国に帰化させて国際大会に出場させるケースが多いが、バルシムは父親もカタール人で競歩選手だったという。コーチはポーランド人で、4~6月に故障している間はダイヤモンドリーグなどメジャー大会には姿を見せなかったが、ポーランド国内の試合に出場して調整をしていた。

 2メートル39は1984年に朱建華(中国)がマークしたアジア記録(当時の世界記録)とタイ。朱は現在の劉翔(110メートル障害前世界記録保持者)のような国民的なスター選手で、ロス五輪では金メダルを期待されていたが銅メダルに終わった。

 バルシムは昨年のアジア選手権時に「将来は2メートル46の世界新記録も狙いたい」と話していた。28年の時を経て、アジアの走り高跳びが世界の頂点に立てるところに来た。