◆9月後半の陸上競技展望◆

 国内のトラック&フィールドは、チームと個人の実業団日本一を決める全日本実業団対抗が行われ、ロンドン五輪代表選手たちも多数参加する。海外のトラック&フィールド主要大会は一足早く9月前半で終了。9月末から11月にかけて、欧米の都市型マラソンが世界各地で開催される。

 全日本実業団対抗にはロンドン五輪代表が21人エントリーした。学生の代表が多くなったことが話題になった今年のオリンピックだが、実際の数は実業団の方が多い。

 なかでも5人の代表が出場するのが男子1万メートル競歩。20キロ競歩代表だった鈴木雄介(24=富士通)と藤澤勇(24=ALSOK)、50キロ競歩代表だった森岡紘一朗(27=富士通)と谷井孝行(29=佐川急便)、山崎勇喜(28=自衛隊体育学校)と、日本競歩界のオールスター的な顔触れになった。

 距離が短いだけに20キロ代表が有利と思われそうだが、50キロ代表の森岡や山崎も、かつては20キロで日本選手権を制したことがある。勝負はやってみないとわからない。

 山崎が2008年北京五輪、鈴木と森岡が2011年テグ世界陸上で入賞者した競歩。近年、世界で通用する種目になってきたため注目度も高い。

 女子1万メートルも豪華メンバーだ。ロンドン五輪代表だった福士加代子(30=ワコール)と吉川美香(28=パナソニック)に加え、2009年ベルリン世界陸上7位入賞の中村友梨香(26=天満屋)、日本記録保持者の渋井陽子(33=三井住友海上)がエントリー。テグ世界陸上マラソン代表だった中里麗美(24=ダイハツ)と伊藤舞(28=大塚製薬)も参戦してくる。

 ベルリンマラソンは平坦で走りやすく、高速コースとして世界的に知られている。高橋尚子が金メダルを取ったシドニー五輪翌年に、女子ランナーで初めて2時間20分の壁を破ったのがベルリンだった。

 男子では2007年、08年と“皇帝”ハイレ・ゲブルシラシエ(39=エチオピア)が世界記録を更新。そして昨年はパトリック・マカウ(27=ケニア)が現世界記録の2時間3分38秒をマークした。

 今回一番の注目は男子のジョフリー・ムタイ(30=ケニア)で、昨年のボストンで2時間3分2秒で優勝している選手。ボストンはコースの高低差が大きいため記録が公認されないが、42.195キロを史上最も速く走ったランナーだ。

 ムタイは平地のコースでも2時間4分55秒の記録を持つが、評価が高いのは昨秋のニューヨークシティで2時間5分6秒と大会記録を2分以上も更新したこと。同大会は起伏の激しい難コースとして知られ、平坦なコースなら2時間2~3分台に相当すると言われている。

 ムタイ以外では2時間4分56秒のジョナサン・マイヨ(26=ケニア)、2時間5分42秒のデレッサ・チムサ(35=エチオピア)が2時間6分を切る記録を持っている。ムタイとともに世界新ペースでレースを進めるだろう。

 女子で最も良いタイムを持つのはアベル・ケベデ(23=エチオピア)で2時間20分33秒。野口みずき(34=シスメックス)の保持する大会記録(2時間19分12秒)更新が目標か。