<織田幹雄記念国際:展望・100メートル編>

 織田幹雄記念国際が28、29日の2日間、広島市のエディオンスタジアム広島で開催される。8月のモスクワ世界陸上選考競技会を兼ねる日本グランプリシリーズの第3戦で、男女13種目が行われる。世界陸上で活躍が期待できる選手が多数登場する。

 この春、陸上界最大の注目といっていいのが男子100メートルの9秒台。昨年のロンドン五輪で10秒07の五輪日本人最高をマークした山県亮太(20=慶大)に期待がかかる。7日の東京6大学では10秒47だったが、その時の風が向かい風4・0メートル。専門家の間では、公認範囲の追い風2・0メートルだったら9秒台が出ていたという意見が支配的だ。

 山県本人は数字よりも、自身の追い求める動きに集中している。同大会は7カ月ぶりのレースだったが「30〜40メートルでの2次加速への切り換えも上手くできた」と、感触は悪くなかった。あとは課題としている終盤でのリラックスができるかどうか。

 「伊東浩司さんの日本記録(10秒00=1998年)の映像を見て、最後を流しているという人もいますが、流しているように見えてもスピードは出ている。そういう走りをしたい」。

 ロンドン五輪後に陸連短距離部長となった伊東氏の前で大台突破に挑む。

 男子100メートルには山県に加え江里口匡史(24=大阪ガス)高平慎士(28=富士通)飯塚翔太(21=中大)と、ロンドン五輪で5位入賞した4×100メートルリレーメンバー全員が出場する。

 江里口は100メートルでは予選落ちし、準決勝で好走した山県に水をあけられた格好に。「10秒を切らないと世界で戦えない」と、9秒台一番乗りに意欲を見せる。

 好調なのが飯塚で、3月末の米国遠征で10秒25で走った。追い風2・2メートルで参考記録となったが、この時期としては出色のタイム。伊東部長も9秒台候補の1人に挙げる。

 200メートルでロンドン五輪に出場した飯塚、高平、高瀬慧(24=富士通)の3人が、100メートルに積極的に取り組んでいるのも今季の特徴。

 種目全体の底上げされることにより、9秒台が生まれやすくなる。

 会場のエディオンスタジアム広島は、100メートルの好記録が出ることで有名なトラック。2009年の江里口の10秒07、昨年の山県の10秒08は織田記念の予選で出された。予選で歴史的な一瞬が見られる可能性も十分にある。