<陸上:東日本実業団選手権>◇最終日◇19日◇茨城・笠松運動公園陸上競技場◇男子400メートル障害

 笛木靖宏(27=幕張本郷中教)が49秒75で2連勝。今月5日の静岡国際では49秒48とモスクワ世界陸上B標準を突破している選手。

 今回は風が強くロンドン五輪代表だった岸本鷹幸(23=富士通)でさえ50秒93もかかった。笛木にはA標準の49秒40のみならず、世界大会準決勝レベルの48秒台も期待できる。

 そんな周囲の空気を感じてはいるが、「日本代表を狙う意識ではないんです」と笛木。ハンマー投げの室伏広治(38=ミズノ)と同じ成田高出身で、3年時には4×400メートルリレーで高校新を樹立したメンバーに入った。日大では個人種目で日本インカレ優勝と、エリート街道を歩んでいた。

 その頃は代表を目指す意識で頑張っていたが、実業団1年目に大きな故障をしたこともあって考え方が変わってきた。2年目以降は高校のコーチなどで食いつなぎながらクラブチーム所属で走った。「速く走れない自分が気持ち悪くて、速く走れるように戻すことだけを考えていました。自己満足の世界なんですが、理想とする400メートル障害というのが確立されてきたんです。(勝敗は)自分のレースをした結果、人よりも速くあってほしい、という程度ですね」

 昨年は競技に専念して自身初の49秒台もマークしたが、日本選手権で決勝に残れなかった。今季から教員に正式採用されて「練習時間は毎朝40分前後」という生活を送っている。陸上部の生徒のためにハードルをグラウンドに出すことはあっても、自分が跳ぶために設置したのは「4月以降1回だけ」と極端に少ない。

 そのトレーニングでも48秒台が出せる手応えはある。「でも、目標タイムを決めているのではなく、理想の走りをしたら何秒になるかを知りたくて試合に出ている、というのが本当のところですね」

 少し変わった雰囲気の選手が日本代表レベルの力をつけてきた。