<陸上:出雲全日本大学選抜駅伝>◇10日◇島根・出雲大社前~出雲ドーム前(6区間、44・5キロ)

 箱根の「山の神」を擁する東洋大が、2時間10分43秒で初優勝を飾った。1区でエース柏原竜二主将(4年)が6位と出遅れたが、3区・設楽悠太(2年)、4区・田中貴章(4年)、5区・市川孝徳(3年)が区間賞を奪うなど、高い総合力でライバル駒大、早大を振り切った。従来までの柏原色の強いチームから脱却し、悲願のタイトル獲得だ。駅伝シーズン開幕戦で手応えをつかんだ柏原主将は「3冠を狙いにいく」と宣言。昨季の早大に続く史上4校目の偉業へ、絶好のスタートを切った。

 神話の町・出雲にあって、主役は「山の神」ではなかった。東洋大が柏原色を払拭(ふっしょく)するチーム力で、今季最初のタイトルを手にした。

 まさかの出遅れだった。今季初戦の頭にチームの看板選手を起用したが、拓大・モゼのスピードに付いていけず、33秒差の6位。しかし、ここからが本領発揮だった。2区の川上が粘り強く3位に上げると、3区の設楽悠、4区の田中、5区の市川と3者連続の区間賞。4区で首位の座を奪うと、アンカー設楽啓も安定した走りでリードを守りきり、1月の箱根で21秒差で早大に敗れた悔しさを晴らすかのように、笑顔でゴールに飛び込んだ。

 納得いく走りはできなかったが、主将として柏原は胸を張った。「今年は1人がダメでも巻き返す力がある。それを証明できた」。自らの走りを自虐的に表現し、チームの強さをアピールした。これまでの「東洋イコール、柏原」というイメージを払拭。エースがこけても、しっかりタスキをつなぐ「総合力」を見せつけた。

 「1秒でも削れ」がテーマ。4度目となる今夏もアップダウンのきつい新潟・山古志で走り込み、駅伝シーズンに備えた。自己主張の強い選手が多く「僕は主将らしいことをしていない。頼ってばかり」と柏原は苦笑する。それでも闘将のガッツに引っ張られる格好で、チーム力が高まったのは確か。酒井監督も「柏原のガッツある走りがチームの闘志に火をつける」と期待してやまない。

 出雲を取ったことで、全日本、箱根へと夢が広がる。柏原は「これは通過点。僕たちは3冠を狙うと宣言していますから」。それは架空の神話か、それとも現実となるのか-。山の神を取り巻く熱き戦いが、始まった。【佐藤隆志】