福岡国際マラソン(日刊スポーツ新聞社後援)で日本人最高の3位になった市民ランナーの川内優輝(24=埼玉県庁)が、日本陸連に「完勝」した。レースから一夜明けた5日、福岡市内であらためて来年2月の東京マラソン出場を表明。福岡で五輪代表最有力に躍り出たが、「(東京で)2時間7分台を出してロンドン五輪を決めたい」と話した。選考レース連続参戦に疑問を呈していた陸連幹部からも、4日のレース後の協議で出場OKをもらい、失敗リスクも覚悟の上でロンドンへの道をつくる。

 眠気も痛みも心地よかった。激走から一夜明け、「両脚が筋肉痛で眠られなかった」という川内は、いつものように朝から走っていた。前日の車道から、スーツ姿のサラリーマンが行き交う博多の歩道に変えて70分。祝福やねぎらいの言葉を浴び、次なる戦いに目を向けた。

 川内

 東京では2時間7分台を出して、ロンドンを決めたいと思います。強くなっている自信はあります。危ないですからね、このタイムでは。もう1回挑戦したい。出ないで後悔するより、出て後悔したい。

 すでに五輪代表の最有力候補だ。福岡では驚異的な追い上げで日本人トップになった。一時は50秒差あった今井正人(トヨタ自動車九州)と、36キロ付近から意地とプライドをかけたデッドヒート。根性も強さも見せ制したが、2時間9分57秒のタイムで自己採点は「合格」じゃなかった。

 実業団選手だけでなく、陸連幹部も脱帽させた。4日の表彰パーティー前、川内が「重鎮3人」という木内長距離ロード統括、河野強化副委員長、坂口男子マラソン部長と会談した。「今まで通りやった方がいいと言われました。東京も止めはしないと。福岡の結果が悪かったら言うことは違ったかもしれませんが」。

 選考レース最上位者が、別の選考会に出ることは異例。評価も複雑になる可能性がある。レース前は東京出場の再考を求めていた陸連も、川内のペースを完全に認めた。「お墨付き」となり、18日の防府マラソンから堂々と全国各地のレースに参戦する。クリスマスツリーの前で「プレゼントは東京でいいタイムがほしい」と笑った県庁の星は、我流でロンドンへの道を走り続ける。【近間康隆】