<防府読売マラソン>◇18日◇山口・防府市陸上競技場発着(42・195キロ)

 ロンドン五輪男子マラソンの代表有力候補、川内優輝(24=埼玉県庁)が鉄人ぶりを見せつけた。日本人トップの3位でゴールした4日の福岡国際から中13日でフルマラソンに挑み、2時間12分33秒の好記録で2位に入った。優勝したセルオド・バトオチル(30=モンゴル)には競り負けたが、後半にペースを上げて2位でゴール。日本陸連の坂口泰・男子マラソン部長を「2週間でこの記録は驚異的」と驚かせた。

 福岡から2週間、川内が防府で「鉄人伝説」を築いた。昨年のアジア大会金メダルの池永駿(韓国)も参加する中、前半から先頭集団を走る。1キロ3分10秒ほどのペース。25キロでペースメーカーが外れると、そこから世界選手権のモンゴル代表バトオチルとの一騎打ち。2週間前のデッドヒートがよみがえる。36キロ付近で相手がスパートすると、川内は般若のような形相で追いすがる。しかし、そこは中13日の強行軍。ジリジリと差を広げられ、最後は37秒差でゴール。倒れ込むことなく、しっかりした足取りで勝者に歩み寄った。

 バトオチルから「ロンドンで一緒に走ろう」と声をかけられると、川内は「ロンドンでは負けませんよ」と即答した。2時間12分33秒は自己3番目の好タイム。「競り負けたのは悔しいですが、前半から後半にかけてペースを上げることもできたし、上出来です」。言葉通り、前半が1時間6分31秒に対し、残り半分は1時間6分2秒で走破。そして笑顔とともに、抑えていた本心があふれ出た。

 川内

 福岡から2週間。常識外れだとか、頭がおかしいとか言われた中で、サードベストの記録が出た。みんな自分の中に限界をつくってやっている。僕は、やってみないと分からないじゃないか、と思っていますから。今回は東京に向けて自信になりました。

 川内フィーバーもあり、男子の参加者は42回目で史上最多の1986人。レース直後には同じ市民ランナーたちから握手攻めに遭い、「オリンピックに行けよっ」と声が飛んだ。10回目のマラソンとなった今回は、初めての別府大分以来、ゴール直後に倒れなかった。「1つの進歩。瀬古(利彦)さんから倒れるうちはプロじゃないと言われました。気持ちはプロのつもりです」。照準とする2月の東京で、夢の2時間7分台へ-。ブレークした1年の締めくくりとともに、川内がまた1つ大きなステップを踏んだ。【佐藤隆志】

 ◆男子マラソンのロンドン五輪代表選考

 9月の世界選手権と12月の福岡国際、来年2月26日の東京、同3月4日のびわ湖が対象レース。具体的な設定基準はなく、各レースに1キロ3分で25キロまでペースメーカーを付け、内容を考慮する。各大会の上位から「五輪での活躍が期待できる」と思われる3人が選ばれるが、福岡で日本人トップの3位に入った川内は有力候補。世界選手権はメダル獲得した最上位者が代表に内定するはずだったが、当該者はいなかった。