<陸上:谷川真理ハーフマラソン>◇8日◇東京・荒川河川敷

 ロンドン五輪の男子マラソン代表最有力候補・川内優輝(24=埼玉県庁)が、今年初レースで強烈な逆風の中を激走した。河川敷コースを前半から独走、後半は強い向かい風を体全体に受けながらも力強い足取りでゴール。記録は1時間6分19秒の総合2位だったが、ゴール後に倒れることもなく、年末の1日約60キロの走り込みで進化した姿を披露した。約2万人のギャラリーを前に、目標の東京マラソン(2月26日)での2時間7分台を宣言。さらに「市民ランナーでもオリンピックに出られることを証明したい」と誓い、喝采を浴びた。

 川内のロンドンロードが、荒川河川敷から始まった。1万人の市民ランナーが参加した草レース。午前10時の号砲に勢いよく飛び出した。川内のBコースは、Aコースとは真逆に、発着地点の新荒川大橋から川下へ走って戻るルート。前半は追い風を背に受け最初の5キロを14分54~55秒で入り、10キロ通過も30分10秒。完全な独走態勢となった。

 しかし、折り返すと河川敷の強風にさらされる。疲労が出たところに向かい風だ。5キロは16分台まで落ちる。それでも持ち前の粘りでペースを維持した。ゴール地点にはまず、Aコースから追い風に乗って徳本一善(日清食品)が1時間5分36秒で先着。遅れること43秒。鬼の形相で川内が帰ってきた。ただゴールを抜けても倒れず、そのままマイクインタビューに応じた。

 川内

 1年の初めのステップレース。立ち上げとしてはいい練習になった。これで2月の丸亀ハーフは気合を入れ、それで東京で2時間7分台を出します。市民ランナーでも、オリンピックに出られることを証明したいと思います。応援よろしくお願いします!

 参加ランナーのほかにも周辺には約1万人を超えるギャラリーが見守った。そんな中でオリンピックイヤーへの決意表明だ。大きな拍手と歓声が飛んだ。

 年末は母校・春日部東高の合宿に参加。早朝、午前、午後の3部練習で1日50~60キロも走り込んだ。日ごろは1日20キロ。「公務員なんで休める年末が走りどころ。普段の2・5倍できた」。大みそかも40キロ走をやり、元旦も走った。2日は箱根駅伝の往路を応援。学習院大時代に学連選抜で走った記憶をよみがえらせた。そして前夜は母美加さん手製のカレーライスを腹いっぱい食べ、今年初戦に備えた。

 先月の福岡国際で日本人トップの3位に入り、五輪切符に手をかけた。それでも納得せず、東京で記録に挑む。その東京には、福岡で川内に屈した前田(九電工)ら実業団の有力選手が「打倒・川内」を掲げてリベンジにくる。それでも当の川内は意に介さない。「その中で勝った選手が本当に強い選手ということ。勝てるようにしっかり走って2時間7分台を出す。それで負けたなら仕方ない」。元世界記録保持者ゲブレシラシエも出場するレースをロンドンの前哨戦と見立てた。

 市民ランナーの誇りを持つ川内は、五輪切符をつかんでも調整法は変えるつもりはない。「僕の夢は全国の市民マラソンめぐり。スケジュールが合う限り、参加していきます」。五輪選考レースの2度走りに、2週間で2度のフルマラソン。さらには市民マラソンめぐり。常識を覆す川内が、今年も日本のマラソンを熱くしそうだ。【佐藤隆志】

 ◆男子マラソンのロンドン五輪代表選考

 昨年9月の世界選手権と12月の福岡国際、2月26日の東京、同3月4日のびわ湖が対象レース。設定基準はなく、各レースに1キロ3分で25キロまでペースメーカーを付け、レース内容を考慮。各大会の上位から「五輪で活躍が期待できる」と思われる3人が選ばれるが、福岡で日本人トップの3位に入った川内は現時点で最有力候補。なお世界選手権はメダルを獲得した最上位者が代表に内定するはずだったが、当該者はいなかった。