昨年10月にカンボジア国籍を取得し、同国のロンドン五輪男子マラソン代表に選ばれたタレント猫ひろし(34)が、同五輪に出場できなくなったことが8日、分かった。猫の参加資格に疑問を呈し、4月にカンボジア側に説明を求めていた国際陸上競技連盟(IAAF)が、参加資格を満たしていないと判断し、通達した。同国オリンピック委員会も決定を受け入れる意向だ。猫はこの日も都内でトレーニングを続けたが、所属事務所は「正式な決定を受けていない」とし、コメントはしなかった。

 ロンドン五輪出場を熱望し、国籍まで変更した猫にとっては、非情な最後通告が突きつけられた。IAAFからカンボジア陸連(KAAF)に通達された7日付の文書で、「国際競技会にカンボジア代表で出場できるのは今年10月以降」との最終判断が下った。同国五輪委員会(NOCC)のワット・チョムラーン専務理事は「これ以上は抵抗しない。決定に従う。早急に人選して別の選手を派遣する」と明言した。

 IAAFは国籍変更選手の参加資格について、過去に国際競技会で代表経験がない選手についても、今年から新たな規定を導入した。国籍取得後1年が経過していない場合は(1)連続した1年の居住実績(2)IAAF理事会による特例承認のいずれかが必要とした。

 猫はタレント活動などもあり、同国での連続した1年の居住実績がない可能性が高いとみられていた。カンボジア側は、4月12日にIAAFから参加資格について照会を受けた際に「09年からカンボジアに住み、ビジネスをしている」などと主張。猫サイドがNOCCと共催の形で、同国に「プノンペン国際ハーフマラソン」を立ち上げた実績もあったが、主張は受け入れられず特例の申請も認められなかった。

 猫の自己ベストは、2月の別府大分毎日マラソンで出した2時間30分26秒で、五輪参加標準B記録の2時間18分に大きく届かない。ただカンボジアに標準記録に達した陸上選手がおらず、3月に代表に選ばれた。

 ところがライバルのヘム・ブンティンが、4月15日のパリマラソンで猫の記録を7分近く上回る2時間23分29秒を記録し、雲行きが怪しくなった。猫は「僕もランナーなので、彼がここまで記録更新するのは並大抵の努力ではないことが分かります。今の時点で彼が僕より速いのは確か」と力不足を認めていた。

 猫は今月上旬にカンボジアに“帰国”し、五輪前最後の実戦として6月17日の「第2回プノンペン国際ハーフマラソン」に出場する予定だった。この日も都内の施設で加圧トレーニングやランニングを1時間ずつ行った。この日夜にはツイッターで「全然疲れとれない。でもタイムがまた速くなってる。練習きちんとして良かった」などと五輪消滅については触れずじまい。さらに、ブログでは「寝るとき用のマウスピースを作ってもらった」とつづり、五輪出場への希望すらにじませた。

 昨年8月には「ロンドンがダメなら4年後を目指すが、その間ただの外国人タレントになってしまう」と語っていたが、最悪の結末となった。所属のWAHAHA本舗関係者は「何の連絡も受けていないし確認も出来ていない。正式な連絡があれば対応したい」とだけ答えた。

 ◆猫(ねこ)ひろし

 本名・滝崎邦明(たきざき・くにあき)。1977年(昭52)8月8日、千葉・市原市生まれ。目白大卒業後、03年に芸能界デビュー。「ニャ~」のあいさつや「猫ひろし」を連呼するネタなどで人気者に。07年にテレビ番組の企画がきっかけでマラソンを始め、初マラソンは08年2月の東京マラソン(3時間48分57秒)。昨年10月28日にカンボジア国籍を取得。WAHAHA本舗所属。147センチ、45キロ、足のサイズは24・5センチ。家族は妻と1女。血液型A。