男子マラソン五輪代表の藤原新(30=ミキハウス)は13日、都内で大手食品会社「カゴメ」とのスポンサー契約を発表した。会見に現れた藤原のランニングシャツの胸には、ミキハウスを筆頭に、BMW、ANA、KAGOMEと名だたる大手企業がズラリ。2月の東京マラソンを経て、無所属ランナーから一転プロの「セレブ」ランナーとなった男は「無職時代の気持ちは絶対に忘れない」。多額の活動費を手に、残り2カ月を切ったロンドン五輪(8月12日号砲)へ、全力投球で突き進む決意を示した。

 服に、車に、飛行機に、トマトまで。にぎやかなランニングシャツ姿で藤原は現れた。この日、発表したカゴメを合わせて、大手企業4社が胸ロゴについた。無職ランナーが、わずか3カ月で「セレブ」ランナーになった。写真撮影ではカゴメの象徴トマトをくわえ、いつものおどけた姿を披露する。それでも今の心境を問われると、表情はすぐに引き締まった。

 藤原

 東京の後は頭がからっぽで…、ここまで想像できなかった。心強い。無職時代の踏ん張りを評価してもらったわけで、その気持ちを絶対に忘れてはいけない。強いマインドというか…、それを失ったら、ボクの価値はゼロになる。

 無収入では戦えない。まず自らをプロデュースする「株式会社

 藤原新」を設立し、社長に就いた。ニコニコ動画に始まり、ミキハウス、BMW、そして無類のトマト好きを売りにカゴメとの契約もつかんだ。移動の足として全日空と契約したことも、胸ロゴで判明。さらに地元長崎も動いた。老舗「福砂屋」から名物のカステラをゲット。通販会社「ジャパネットたかた」の高田社長とも接触した。非公式なものも合わせれば、問い合わせは30~40社レベル。ただ五輪本番まで2カ月を切り、十分な活動費を得たことでスポンサー契約はこれで打ち止めにする。

 今月から本格的な厳しい走り込みに入った。11日には40キロ走の後に激しい疲労に襲われ、翌日のイベントをキャンセルしたほど。「もう1回、切れ味を研ぎ澄ませる」。7月1日の札幌国際ハーフへの出場も公表し「生きたレースの中で、どれだけ練習の成果を出せるか」。いつまでも浮かれていられない。プロランナーとしての真価が問われる、本当の戦いが始まった。【佐藤隆志】

 ◆藤原の五輪までのスケジュール

 今月19日から北海道合宿。23日は士別で、27日は深川で行われるトラック競技のホクレン・ディスタンスチャレンジに参加。7月1日は札幌国際ハーフマラソンに出場した後、5日からスイス・サンモリッツで1カ月間の合宿に入る。8月5日前後にロンドンへ移動。同12日の男子マラソンに向け、1週間ほど現地で最終調整する。