<箱根駅伝連載

 戦国駅伝:(2)双子編>

 今回は例年になく不思議なほど各大学に双子が集まった。中でも、トップクラスの実力を誇るのは東洋大の設楽啓太、悠太。大会2連覇へとけん引するダブルエースに焦点を当てた。

 一番応援したくて、一番負けたくない相手。その存在が、互いを押し上げた。「新・山の神」柏原竜二(現富士通)が卒業した東洋大。大きな穴は1人では埋められない。でも、2人なら-。設楽啓太と悠太。双子の兄弟は今年、ハーフマラソンと1万メートルでそれぞれ東洋大記録を作った。「一番負けたくない」と言い合う対抗心が、東洋大にダブルエースを生み出した。

 1万メートルで、初めに記録を作ったのは兄啓太だった。4月に28分15秒90をマーク。柏原が持つ東洋大の記録を塗り替えた。前回2区で首位に躍り出た立役者は、1万メートルで高校歴代11位の記録を持つ実力者。一方の弟は、前回7区で区間新を出すも、兄の記録を超えることはなかった。

 その悔しさが、弟を強くした。2カ月後の6月の大会で、今度は悠太が28分12秒82をマーク。初めて兄を上回った瞬間に、弟は「びっくりした」。兄は「同じレースで出されたので一番悔しい。それがあって、夏合宿でしっかり練習を積めた」。相乗効果が、2人を押し上げていった。

 小学6年で一緒に始めた陸上。好きなアイドルは兄がAKB48の大島優子、弟がももいろクローバーZの玉井詩織と、ここでもライバル心がぶつかり合う。ただ「練習のとき、一緒に短パンを忘れたことがある」(悠太)と波長は合う?

 2人。最大目標は「一緒に五輪の舞台に立ちたい」。その日まで続くつばぜり合い。それが、東洋大を連覇に近づける。【今村健人】

 ◆今大会の主な双子

 双子でエントリーしているのは東洋大の設楽兄弟、順大の松村兄弟だけではない。駒大と城西大に分かれた村山謙太、紘太(2年)、大東大の市田孝、宏(2年)の4組計8人に上る。また、2人同時エントリーとはならなかったが、東洋大の冨岡司(4年)、城西大の杵島凌太(2年)、山梨学院大の前田拓哉(1年)、日大の村越直希(2年)も双子だ。ちなみに、卒業した「新・山の神」柏原も双子の弟だった。