<仙台国際ハーフマラソン>◇12日◇仙台市陸上競技場発着の21・0975キロ

 ヤジも大歓迎!

 世界陸上モスクワ大会男子マラソン代表の川内優輝(26=埼玉県庁)が、沿道から激励のヤジを浴びながら1時間3分30秒の10位と粘った。4月25日の代表決定を機に「がらっと雰囲気が変わった」という周囲の期待を背に、8月の世界舞台を目指す。メクボ・モグス(日清食品グループ)が1時間1分54秒で優勝した。

 ヤジぐらいで、公務員ランナーはメゲない。むしろ闘争心をメラメラとさせてくれる快感だ。「頑張れ」一色だった沿道の声援が、この日は違った。「こんな順位で走ってんじゃねえゾ!」「お前、ナメてんのか!」「外国人を追えよ!」。5キロで100メートル、10キロで250メートルと3人の実業団所属アフリカ勢に離される。それはフルマラソンを“本職”とする川内からすれば、当然のレース展開。強烈なヤジは「強い川内」が印象づけられた証しだ。

 怒気を含んだ沿道の空気を、川内は楽しそうに明かした。「雰囲気がガラッと変わったと思うんです。日本代表として、もっと集中して気を引き締めて、ヤジも力に変えられれば」。昨年より順位こそ4位から落としたが、タイムは「世界陸上に向けては上々」と19秒アップ。中盤以降は15人ほどの第2集団で、ライバル視する実業団選手をターゲットに、ペースの上げ下げも試した。「6位での入賞」を世界陸上の目標とする川内にすれば、格好の予行演習にもなった。

 「日本代表」の重みを、さらに自覚する。「前の集団を抜かせば入賞できたのに追いつけなかった。世界陸上で同じ展開だったら、日本国民の期待を裏切る」と悲壮なまでの言葉を発した。本番まで約3カ月。叱咤(しった)激励も、レースの失敗も全てを糧に、スタートラインを目指す。【渡辺佳彦】