<陸上:京都府高校総合体育大会>◇19日◇西京極◇男子200メートルほか

 男子100メートルで日本歴代2位の10秒01を記録した桐生祥秀(よしひで=17、京都・洛南高)が、200メートルで世界選手権(8月、モスクワ)の参加標準記録Bを突破した。今季初の200メートルレースに出場し、3本目の決勝で追い風1・6メートルで自己記録の20秒59をマーク。高校記録まで0秒02差に迫った。200メートルでも非凡な才能を見せつけたが、6月の日本選手権(味スタ)と世界選手権は100メートルでの勝負を優先する考えだ。

 桐生は、電光掲示板を見て、天を仰いだ。この日、3本目となった200メートル決勝。スタートから飛び出し、他の高校生に影も踏ませない優勝。20秒59で自己記録を0秒11も更新して、世界選手権の参加標準記録Bもクリア。それでも高校記録に0秒02届かなかった。

 桐生

 ゴールし終わって、すぐには掲示板のタイムが見えなくて。正直、悔しい気持ちがありました。

 準決勝は、残り50メートルを流して自己記録タイの20秒70。決勝で高校記録を狙うも日本人初の9秒台に0秒02届かなかった100メートルと同じタイム差で及ばず。関係者に「また0秒02(足りない)ですよ~」と嘆いた。

 200メートルでも強さをみせたが、桐生はこう口にする。「200メートルで速くなれば、100メートルも速くなる」。洛南高はグラウンドを斜めにとっても80メートルの走路が限界。普段は野球部も練習しており、50メートルの直線を走る。200メートルの練習は、50メートル地点で折り返して2往復、300メートルなら3往復する。加速→減速→ターン→加速を繰り返す変則的な練習だ。勢い余った選手がグラウンド端のネットに突っ込むと、教員から「網、破らんといてや」と声が飛ぶ。

 この練習法を聞いた日本選手権100メートル4連覇中の大阪ガス江里口は「マジで!

 足は大丈夫なの?」と目をむき、大阪ガスの朝原コーチは「(速さの秘密は)それか!

 よし、いただくか。無理か…」と口にする。苦肉の策ともいえる独特の練習が、桐生の爆発的な加速を支えている。

 今後は高校総体と、日本選手権→世界選手権を両にらみで走る。6月の日本選手権は100メートルに絞る予定。世界選手権は200メートルでも参加標準記録Bをクリアしたが「100メートルだったら、タイムにかかわらず、世界と勝負したい。ボルト選手と走れるなら横で走ってみたい」。過密日程によるけがを避けるために、100メートルに集中する構えだ。

 大目標の16年リオ五輪も主戦場で勝負する。「いければ、100メートルで狙っていこうと思う。レースに耐える、けがをしない体をつくって、3年後にベストの状態で臨みたい」。サッカー少年だった小学校時代は快足と名前から「JET(ジェット)桐生(気流)」と呼ばれた。中学校1年で陸上を始めて、わずか5年強で「9秒台に一番近い17歳」になった桐生は「100メートルは自分が最初に9秒台を出したい」と宣言した。【益田一弘】

 ◆100メートルと200メートル

 両種目を掛け持ちするスプリンターが多い。200メートルはカーブからスタートし、直線でゴールを迎える。スピードに加えて、コーナーワークも重要とされる。日本人は100メートルで9秒台、200メートルで19秒台に突入した選手はいない。ウサイン・ボルト(ジャマイカ)は、100メートルと200メートルの世界記録保持者。