<ベルリン・マラソン>◇28日◇ベルリン

 男子はデニス・キメット(30=ケニア)が2時間2分57秒の世界新で優勝した。昨年の大会でウィルソン・キプサング(ケニア)が出した従来の記録を26秒短縮し、初の2時間2分台突入となった。

 ゴールのブランデンブルク門をくぐり抜ける時も、キメットはほとんど表情を変えない。軽快な足取りも変えないまま、両手を上げてゴールに飛び込んだ。「全力を尽くし、世界記録を出す自信もあった。残り5キロでいけると思った」。コースを取り囲むベルリン市民の大声援に背中を押され、ゴールに近づく1歩ごとに、自信は確信となっていった。人類初の2時間2分台に突入する世界新が誕生した瞬間だった。

 レースが動いたのはペースメーカーが離れた30キロから。3人の集団となり、そこから世界記録更新ペースに戻った。35キロ手前でE・ムタイ(ケニア)との一騎打ちに。「負けたくないと思った。35キロからエネルギーが出てきた」と38キロすぎにスパートをかけ、一気に突き放した。最後は16秒引き離した。

 昨年のシカゴで2時間3分45秒の好記録を出した。「そのときと同じくらい好調。シカゴは勝負、今回はタイムを狙っていた」と語る。世界記録の最新5回すべてを塗り替え、世界歴代10傑の7位までを生み出した屈指の高速コースで、見事に有言実行した。

 男子マラソン界はベルリン、東京など高額賞金大会による「ワールド・マラソン・メジャーズ」の創設で高速化に一層の拍車がかかる。日本記録が02年10月に高岡寿成が出した2時間6分16秒と伸び悩むなか、1時間台の記録も現実味を帯び始めた。キメットは「自分がもう1度更新して、2時間を切りたい。来年にも」と力強く宣言した。【渡辺修】