柔道の世界選手権が25日からロシアのチェリャビンスクで開幕する。ロンドン五輪女子57キロ級金メダリストの松本薫、世界選手権連覇を目指す男子60キロ級の高藤直寿ら2年後のリオデジャネイロ五輪に向けた強力布陣。昨年軽量級で初日から3連勝しながら中量級以降でメダル0と失速した男子も、金メダル0という惨敗に終わった女子も、メダルラッシュを狙う。

 一方、9月に控えるアジア大会に出場するのは「2番手」の選手たちだ。前回の広州大会は同年の世界選手権代表が出場したが、今回は両大会の試合間隔が3週間と短いため世界選手権とは別のメンバー編成。五輪出場資格になる国際柔道連盟(IJF)ポイントを得るチャンスを多くの選手に与える狙いもある。

 体操も10月の世界選手権(中国・南寧)がアジア大会の日程と近いため、主力は世界選手権に出場。アジア大会は、世界選手権個人総合4連覇中のエース内村航平らを除いた「2番手」の出場になる。

 アジア大会は、五輪に次ぐ総合競技大会。かつては五輪で「世界一」を狙うのと同じようにアジア大会で「アジア王座」に就くことが重視された。五輪中間年に行われる大会は、2年後の五輪を占う意味でも重要な大会だった。

 ところが、近年はこれが変わりつつある。4年に1回や2年に1回開催だった各競技の世界選手権の多くが、ここ10~20年で毎年開催になったことが大きい。五輪のメダルを狙う選手たちにとって、アジアで好成績を収めるよりも世界のライバルと戦うことを望むのは当然。「どちらか」となれば、多くの選手が世界選手権を選ぶだろう。

 さらに、世界選手権が柔道のように五輪出場に直結するとなれば、なおさら世界を重視したくなる。五輪前年の世界選手権が五輪予選を兼ねるケースも多い。経験の浅い選手は、今年の世界選手権で「本番」の来年の予行演習をしたいところだろう。五輪が最終目標ならば「アジアより世界」と考えるのが自然だ。

 もちろん、アジア大会重視を打ち出している競技団体もある。陸上と水泳だ。「五輪の華」とも言われる水陸両競技の世界選手権は2年に1回の奇数年開催。五輪中間年の最大の目標はアジア大会になる。「水泳は昔から変わることなくアジア大会重視」と日本水連の関係者。言葉には、総合競技大会の「華」であることへの誇りがみえる。

 卓球やバドミントンもトップ選手がアジア大会に出場する。世界でもレベルが高いアジアでの成績が、五輪にも直結するからだ。

 五輪ならば、すべての競技団体が最優先に考える。しかし、アジア大会は競技間の温度差が激しい。今大会はTBSテレビが力を入れて中継する。競技によって、国によって違うアジア大会の位置づけ。日本と各国がどういうレベルの選手を出しているのかが分かれば、その見方も変わってくるはずだ。