悔しさまじりのV4だ。羽生結弦(22=ANA)が、男女通じて史上初の4連覇を達成した。ショートプログラム(SP)は首位だったが、フリーはミスが続いて187・37点の3位。合計293・90点で逃げ切った。フリーでの4回転ジャンプ4本は、来季中の完成を計画していたが、悔しさから今季中の達成を誓った。

 フリーを滑り終えると、仕方なく笑顔をつくる羽生がいた。得点を待つキスアンドクライでリプレー映像を見ていると、いらだちが募ってくる。思わず「ここなんだよ、ここ」と声が出た。

 焦点は、今季3戦で1度もそろえられていない4度の4回転ジャンプ。14年ソチ五輪王者の羽生にとって最大の目標は18年平昌五輪での連覇。そのためにプレシーズンの今季から2シーズン越しの計画は始まっている。その中の1つがフリーでの「4回転ジャンプ4本」だ。最初の4回転ループは耐えながらも決め、次の4回転サルコーは出来栄え点を2・57点も稼いだ。だが、後半最初に待つ3本目の4回転サルコーは、着地が乱れて転倒。予定していた連続ジャンプにできなかった。今季これまで3戦とも失敗している「鬼門」だった。その後にスピードが落ちて、ミスを連発。得意のスピンも精彩を欠いた。

 SPの貯金が効いての4連覇。男女通じ初の快挙については「すごくうれしい」と言ったが、15年世界選手権以来となるフリー3位は「非常に悔しい順位」。前回のNHK杯で手応えをつかんだフリーでの失敗に「実力が足りないなと思ったのと、1つ1つのスケーティング、スピンだったり、ジャンプが跳べなくなるとおろそかになってしまうと感じた」と反省点を並べた。

 陰陽師(おんみょうじ)を演じた昨季のフリーは4回転3本で世界最高得点の219・48点をマーク。それを超えるために4本にしたはずが、まだ200点も超えていない。「めちゃくちゃ悔しい。本当は来シーズン完成させればと思ってましたけど、今季の後半には完成させたい」と前倒しでの4本成功と完璧な演技での歴代最高更新を約束した。

 試合後の会見で、4回転半ジャンプについて聞かれ「夢はクワド(4回転)アクセルを跳ぶこと。試合でも入れたい」と大まじめに宣言。「王者ですから」とプライドがのぞく。五輪連覇へ、4回転3種類4本の壁を越えた先には、もっと大きな挑戦も待っている。【高場泉穂】