SP4位の宇野昌磨(18=中京大)は、フリーで自己ベストの195・69点をマークし、合計282・51点で2季連続の銅メダルを獲得した。

 滑り終えると宇野はしばらく、ぼうぜんと立ちつくした。その後、汗と少しの涙を拭った。全てを出し切った表情だった。

 「とにかく思い切りいこう」。時差ボケで体が全然動かなかったSPから一転、気合を入れて滑り出すと体が面白いように動いた。4回転フリップを決め、最後までタンゴの曲に合わせ、表情豊かに演じきった。「何とかやった。今までほっとした試合はたくさんあったけど1番」。自己ベストの演技だった。

 1週間前まで調子はどん底だった。シニア2年目の今季はGP第1戦スケートアメリカで優勝、続く第3戦ロシア杯でも2位。一番乗りでファイナル進出を決めた。それが裏目に出た。「もっとうまくなりたい」と思うあまり、自分を追い込んだ。慣れない走りこみを始め、1日の練習でフリーを完璧にやるまで8度も通したことも。寝るときもスケートのことを考えた。努力の半面、調子は上がらず今までにない苦しみに襲われた。樋口コーチに「追い詰めた顔になっているよ」と言われて初めて「気が抜けた」。調子が上がり始めたところでこの試合を迎えた。

 2季連続銅メダルでも、無欲で取れた昨年と「戦えている」と手応えがある今年は違う。世界で戦うための今後の課題はコンディション調整。このフリーで糸口をつかんだ。フリーの後は疲れ切り、宿に帰ると靴下だけ脱いでベッドに倒れた。一夜明けた11日には「全力でいってちょうどいいと分かった」と語った。昨年ここから失速したシーズン後半戦へ、試行錯誤を続ける。