プレーバック日刊スポーツ! 過去の2月16日付紙面を振り返ります。2016年の終面(東京版)は、錦織圭がメンフィスOPを4連覇した紙面でした。

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<テニス:メンフィスOP>◇最終日◇14日(日本時間15日)◇米メンフィス・メンフィスラケットクラブ◇優勝賞金10万9950ドル(約1260万円)◇シングルス決勝ほか

 これが世界トップ10の実力だ。世界7位の錦織圭(26=日清食品)が、大会初の4連覇を成し遂げた。

 15年ジュニア世界王者で、破竹の快進撃で勝ち上がった米国の新星、テーラー・フリッツ(18)を6-4、6-4のストレートで下し、今季初優勝となるツアー通算11勝目を挙げた。

 68年オープン化(プロ解禁)以降、現存するツアー大会で同一大会4連覇は7人目。現役ではナダル(スペイン)フェデラー(スイス)ジョコビッチ(セルビア)に次ぐ4人目の快挙となった。

 どうだ!! 勝利の瞬間、錦織の表情がどや顔に変わった。胸を張り、優勝は当然といった表情で、ネット越しにフリッツを慰めた。派手な優勝ポーズは、右手を1回突き上げただけ。「優勝に価値はあるが(第1シードなので)ほとんどうれしくない」と豪語した。

 3度目のマッチポイント。最後は、跳び上がってフォアを打つ代名詞の「エアケイ」をたたき込んだ。アウトにはなったが、股抜きショットも披露し、相手地元の観客の心も引き寄せた。米国期待の若手を前に、これが世界の実力だと言わんばかりに「ささっと終わった(1週間だった)」と余裕の表情で振り返った。

 08年デルレービーチ国際で、予選から勝ち上がり、18歳でツアー初優勝を遂げた。以前、その頃のことを「無我夢中で何も考えてなかった」と話した。失うものがない強さを自身で証明していただけに「負けたら一生引きずるのではないか」と18歳の新鋭の勢いを警戒した。

 立ち上がりはその勢いに圧倒された。3ゲームで2点しか奪えず、あっという間に0-3。それでも「思い切っていこう」と自らを鼓舞した。第5、9ゲームで、相手のサービスゲームを破るのに成功。6-4で第1セットを奪うと、第2セットは1度もサービスゲームを落とさず「完璧だった」と突き放した。

 トップ10に定着して約1年半。ツアー決勝も今回で16度目と「自分もいろんな経験をして強くなっている」と話す。その間、14年全米準優勝とアジア男子史上初の4大大会決勝進出の快挙もあった。その実力とプライドでいくらジュニア世界王者とはいえ、簡単にタイトルを渡さなかった。

 ツアーで最も低い「250」だけに優勝も当然と捉えているが、4連覇は現役ではナダル、フェデラー、ジョコビッチしか達成していない偉業だ。得たものも大きい。今季目指すのはトップ5復帰、マスターズ大会V。そのためにも年頭には「まだ波がある。安定が目標を達成させる」と話していた。今大会、1セットしか落とさず勝ち抜き「自分の安定感が見えた1週間」と評価した。大舞台での目標に、新たな自信を加えた優勝だった。

※記録と表記は当時のもの