男子フィギュアスケートで、昨季の世界選手権銀メダリストの高橋大輔(22=関大大学院)が、コーチで振付師だったニコライ・モロゾフ氏(32)との契約を打ち切った。6日、横浜市内でのアイスショー出演後に緊急会見し、明かした。日本のトップを争い合う織田信成(21)が復帰に向けて同氏に師事することを受け「ライバルと同じコーチではできない」と判断、自ら「三くだり半」を突きつけた形になった。来季に向けて、後任探しからスタートすることになる。

 高橋が織田の「襲撃」を受け、返す刀で、モロゾフ氏を切り捨てた。「(これ以上)ニコライとは仕事ができない。1週間前に話し、今まで3年間、ありがとうと伝えた」。苦しい選択だったが、バンクーバー五輪まで残り2年。「何か(新しいことを)やっていかないと」と、スッパリとあきらめた。

 突然の決別となった。3月の世界選手権では「信頼関係は何も崩れていなかった」という。その後、織田とモロゾフ氏が練習しているといううわさを耳にした。「びっくりした」。4月26日に織田が、酒気帯び運転による謹慎から復帰するにあたり同氏と契約したことを、会見で発表。高橋は困惑するばかりだった。

 同じ国のトップ同士が同じコーチに習うことなど、フィギュア界ではあり得ない。高橋はこの日、あらためて「ライバルと一緒のコーチというのはできない。自分(1人)に集中してもらいたい」と話した。ほかの選手と掛け持ちで指導を受けるくらいなら、新スタッフを迎えた方がいいと、決心した。

 モロゾフ氏とは何度も電話で話し合った。昨季の世界選手権では、日本男子最高の銀メダルを獲得したコンビだ。「ニコライと高橋は対になっていたと思う」。蜜月だと思っていただけに、一方的なモロゾフ氏の「移籍」は大ショック。最後は同氏から「僕から離れても、君は一流のスケーターであることに変わりない」と励まされたという。

 織田は既に渡米し、モロゾフ氏との練習を始動した。織田サイドから高橋へ、いまだに連絡はない。高橋は「プライベートでスケーターとは連絡を取らない」と言うが、関大の1年後輩である織田の冷たい対応に、納得できない表情を見せた。

 これまでモロゾフ氏とともに、長光歌子コーチにも指導を受けていた。当面、技術については長光コーチがいるため問題ない。しかし、モロゾフ氏は振付師でもあり、こちらは後任探しが急務。井原マネジャーによると、白紙状態という。女子の浅田真央も現在はコーチがいない。日本フィギュア界は、男女のトップがコーチや振付師が不在という異常事態に陥った。【吉松忠弘】