今年の箱根駅伝で準優勝した早大のエース竹沢健介(22)が1日、エスビー食品に入社した。自社製品をPRしつつ、うどんに七味唐辛子が欠かせないように、自分が競技会に必須の存在になりたいとあいさつ。最近2年間は故障しながらも試合を詰め込みすぎたことを反省し、社会人らしく心に余裕をもって競技に臨んでいく姿勢を示した。

 入社式後の会見で、竹沢はコメントにスパイスを利かせた。「うどんで例えると七味のような存在になりたい。七味がないとさみしいですから。競技会でも、竹沢が出ていないとさみしいと思われるような選手になりたいです」。同席した田幸監督は「エスビーでうどんを作ったら、『麺』なんですけどねぇ」と主食ならぬ、主力として期待を寄せた。

 同期は28人で、配属はスポーツ推進局。同時に早大大学院に進学したため、これまでと環境は変わらずに競技に専念できる。同社から早大に出向している渡辺監督の指導も引き続き受けられる。理想の選手は、同社OBの瀬古利彦氏。「一時代を築いた方。それに続けるような存在になりたいです」と目標を掲げた。

 すでに、意識改革を始めた。早大時代はエースとして、故障中でも駅伝を走らなければならなかった。3年で世界選手権、4年で北京五輪があり、過密日程で体を酷使した。今も、ヒザや股(こ)関節が万全でない。悲壮感すら漂った学生生活を終え、3月末まで約3週間、米国に行った。

 走るよりも、視野を広げることを目的にした。サンディエゴでは400メートル障害の為末大と会食。同じカリフォルニア州のマンモスレークでは、米国代表として北京五輪のマラソンに出場したライアン・ホールらの生活を目の当たりにした。竹沢は「考え方がフランク。日本人気質でないものに触れられました」と収穫を口にした。

 当面、レース出場の予定はなく、早大の渡辺監督も「4年間、酷使してしまったので、充電のシーズンでもいい。無理して世界選手権は狙わない」と話す。12年ロンドン五輪へ向け、無理せず、あせらず、じっくりと社会人としてのスタートを切る。【佐々木一郎】