北京五輪陸上男子400メートルリレーの銅メダリストで、旭川大高出身の高平慎士(25=富士通)が来夏、欧州グランプリ(来季から名称変更)に初めて転戦することを明らかにした。約1カ月にわたる武者修行で、12年ロンドン五輪での飛躍に向け、決意した。200メートルでのファイナリストも視野に入れた道産子アスリートに、意気込みを聞いた。

 高平のビジョンは明確だった。今季は14日閉幕のアジア選手権(中国・広州)男子400メートルリレー優勝で幕を閉じたが、すでに来夏の欧州転戦を心に決めている。1カ月にわたる本格的な転戦は初挑戦になる。

 今季の大一番だった8月の世界選手権(ドイツ)400メートルリレーでは、北京五輪と異なる新メンバーで臨み4位(高平は3走)。だが、個人種目200メートルは2次予選で敗退し、目標のファイナル進出はならず、記録も20秒69とベストタイム20秒22に届かなかった。

 -世界選手権を振り返って

 高平

 リレー4位は評価していいと思う。それでも陸上は個人種目ありきの世界、(200メートルで)あんなタイムで競っていては話しにならない。これからは、難しくても「19秒台」を狙います。それを達成するためにはどうしたらいいかと考えた結果が、環境を変えるということだった。国内でシーズンのほとんどを過ごしていては限界があり、井の中のかわずになってしまう。海外での試合を増やそうと思った。

 -これまでも海外試合はありますが

 高平

 大会に選手団で行くのと、1人で転戦するのは大違い。最低、英語が話せてホテルや移動、全部を自分でやりこなせて、大会でも普通に普段通りの力が出せるようにならないといけないし、アクシデントも解決したり。トップ選手と一緒に練習でき、毎週のように顔を合わせて同じレースに出られることが大事なんです。

 10年は日本選手権終了後の夏場(7~9月)の約1か月間、欧州グランプリ(旧名称)を中心で試合に出場する。昨年7月にフランスに2週間滞在し3戦に出場したが、それを超える転戦だ。海外志向は今に始まったわけではない。順大の4年間は、五輪メダル10個のカール・ルイス氏を育てたトム・テレツ氏(76)を訪ね、米・テキサス州ヒューストンで約1か月間の冬季練習を積んだが、今年も足を運んだ。

 -意義と収穫は

 高平

 金メダリストを育てた人がいて、そこで成長していった実際の場所だからです。今も、トップを目指す選手、まさにトップに駆け上がろうとしている選手を生で見られる。僕より速い選手はごろごろいます。何をすればいいのか、何をしなくていいのか、自分に合わせて吸収できる。目標に向かっていく強い気持ちを持たなければいけないということを考えさせられる。もちろんテレツ氏の経験と情熱にも尊敬の念を抱いている。

 -今後について

 高平

 リレーは朝原(宣治)さんが抜け、末続(慎吾)さんを欠き、新メンバーでの1年目にしてはいい結果が出ている。ただ、世界と戦うには4人とも100メートル10秒0の走力がないと、バトンワークだけでは勝ち抜けない。そのためにも個々人の能力を上げることが必要。イチローさんがメジャーで挑戦し続けるように、僕も新しい環境で力をつけていきたいと考えています。僕の後に続く選手や子供たちに夢を追い続けること、挑戦することの大切さを結果で示すことができればうれしい。【構成・中尾猛】