<柔道:全日本選抜体重別選手権>◇初日◇3日◇福岡国際センター◇男女7階級

 「順恵時代」が来た。女子63キロ級で世界王者の上野順恵(26=三井住友海上、旭川南高出)が、圧倒的な力で3連覇を達成した。昨年、初出場で世界選手権を制し、現在ワールドランキングも断然のトップ。名実ともに世界女王の座について挑んだ今年の初戦も危なげない勝ちっぷりだ。2度目の世界選手権(今年9月、代々木)代表も確実で、同階級では不動の地位を確立。12年ロンドン五輪へこの勢いは止まらない。

 強さに貫禄(かんろく)が備わった。上野順は1、2回戦を順当に勝ち上がり迎えた田中美衣(ぎふク24)との決勝戦。勢いに任せてくる相手を畳に何度もつぶし、まさに仁王立ち。優勢勝ち(指導2)だったとはいえ、終始、試合の主導権を握り圧倒した。試合終了のブザーが鳴ってもニコリともせず、涼しい顔で引き揚げた。「どんな時でも勝たなくてはだめ。内容を問われているので」と静かに振り返った。

 もう、第2の女ではない。常にライバル谷本歩実(27=コマツ)の陰に隠れ、一昨年の同大会で優勝しながら北京五輪代表に落選。不遇の時代を乗り越え、1本を取れる柔道を身につけた。昨年、初出場した世界選手権では5試合オール1本勝ち。決勝では、押さえ込みながら笑顔を見せる余裕で世界女王に輝いた。

 この日、会場に姿を見せたケガで休養中の谷本に話が及ぶと「意識していない」と、まゆをぴくりとも動かさずに言った。07年4月の同大会でその谷本に敗れて以来、約3年間、日本人に負けていない。ワールドランキングは2位に950ポイント差(3月2日現在)をつけて首位に立っている。体重62・6キロと「ちょっと軽すぎた」と減量を失敗した中での圧勝劇に、女子日本代表の園田隆二監督は「慎重な面もあったが合格点」と高評価を与えた。

 12年ロンドン五輪へ、代表入りが確実で2度目となる世界選手権にしっかり照準を定めている。2月のグランドスラム・パリ大会準決勝でオランダ人選手に敗れたことを反省し「パワーと技のタイミングを強化する」と気を引き締める。

 昨年9月に帰道した際、旭川南高の恩師、中野政美氏に「ロンドンに連れて行きます」と宣言。五輪連覇の姉、雅恵からは大会前にメールで励まされ「また、勝ったよって伝えたい」と話した。自信と実績を兼ねそろえ「絶対女王」に君臨し続ける。【松末守司】