<フィギュアスケート:中国杯>◇6日◇フリー◇中国・北京

 女子はショートプログラム(SP)3位の安藤美姫(22=トヨタ自動車)が逆転優勝した。演技後半に前代未聞となる5本連続ジャンプを決めてフリー1位となり、合計172・21点でGP通算4勝目を挙げた。日本女子では今季GP初制覇となった。SP2位の鈴木明子(25)は合計162・86点の2位と変わらなかった。SP首位の長洲未来(17=米国)は4位。男子はSP1位の小塚崇彦(21)がフリー1位の156・11点で、合計233・51点。ともに自己ベストでGP通算2勝目を挙げた。

 安藤が常識を打ち破った。演技開始から2分。女子では前代未聞となる5本連続ジャンプの挑戦が始まった。反日感情が高まる中国での一戦。だが次々にジャンプを決めるたびに拍手が起きた。最後の2回転半-2回転ループ-2回転ループの3連続ジャンプを決めると会場が沸いた。黒いドレスに身をつつんだ安藤の冒険心に富んだ演技が観客を魅了した。

 SP3位と出遅れたが、フリー1位。文句なしの逆転勝利でGP通算4勝目を挙げた。「ジャンプで大きな失敗がなかったのが優勝につながった」。後半2分以降の得点は1・1倍。ここに5本のジャンプを集中させ、得点を量産した。だが女子は体力面で後半5本のジャンプは厳しく、普通は4本しか跳ばない。1つ1つのジャンプは高難度ではないが、驚異のスタミナと構成で高得点を稼いだ。

 まだ完ぺきではない。流れが未完成だった10月2日のジャパンオープンは1分55秒すぎに5本連続ジャンプの1本目を跳んで、前半扱い。この日も時間が気になった。「時計を見たら1分45秒で(2分を待っていたら)タイミングがずれちゃった」。後半冒頭の2回転半-3回転トーループの後半が2回転になった。改善の余地はある。

 五輪シーズンの重圧から解放された今季は「楽しく、挑戦」がテーマ。オフを満喫し、ラトビアの小さな街でシーズンに備えた。均整の取れた体形で初戦を迎えたが「まだ絞れる。そうすればジャンプももっと良くなる」と向上心は尽きない。モロゾフ・コーチも「ベテランだと思われるが、まだ22歳」と伸びしろに太鼓判を押す。

 日本女子の今季GP初勝利で12月のGPファイナル出場にも大きく前進した。「またこの地に戻ってこれるように、次のロシア杯は進歩したと言われるようにしたい」。安藤が次の輝ける戦いへ目を向けた。