五輪柔道金メダリストの内柴正人氏(33)が29日、教え子へのセクハラ行為で、客員教授を務める九州看護福祉大を懲戒解雇となった。この日、大学側が会見し、柔道部コーチとして女子部員にセクハラ行為があったことを認め、同日付で解雇したことを発表した。内柴氏は、66キロ級で04年アテネ、08年北京両五輪を連覇。昨年4月から柔道部コーチとなり、今年1月に客員教授に就任。事実関係を認めているが「合意の上だった」と話しているという。

 熊本県玉名市の大学で行われた会見によると、内柴氏は9月19日に未成年の女子部員と飲酒した上でセクハラ行為をしたという。飲酒したのは合宿先のホテルの食堂で、その後ホテルの一室でセクハラ行為に及んだ。学校側は同月23日に部員関係者からの情報で事実関係を調査。その結果、「教職員として適格性を著しく欠き、大学の信用を失墜した」として、懲戒解雇の処分を決めた。

 内柴氏は事実関係を認めながらも「合意の上だった」と話している。しかし大学側は「本人の意に反する、性的な脅迫行為をしたということ」と、内柴氏の言い分を否定。被害者の女子部員も「合意ではない」と話しているという。さらに「未成年の被害者は酒に酔い、正常な状態ではなかった」と、内柴氏が部員の飲酒を黙認していたことも問題にした。

 大学は管理が不十分だったとして内柴コーチのほかに学長と女子柔道部長の減給、監督と他の男性コーチを戒告の懲戒処分にした。二塚信学長は「事態を深刻に受け止めている。学内で検証していく」と会見で謝罪。しかし、詳細な被害状況については「女子部員が18人と少なく、被害者の特定につながる」として明らかにしなかった。被害者の人数も「何人かは申し上げられない」と、複数が被害にあっていた可能性も否定しなかった。

 熊本県合志市出身の内柴氏は北京五輪後もロンドン大会での五輪3連覇を目指して競技を続ける意思を示していたが、昨年10月に現役引退を発表。12月いっぱいで所属していた旭化成を退社し、今年1月から九州看護福祉大の客員教授を務めながら女子柔道部を指導していた。

 ◆九州看護福祉大学

 98年4月に熊本県玉名市に開学。地元自治体の財政支援を受ける「公設民営」の私立大学。看護福祉学部だけで、看護学科など5つの学科を持つ。今年5月1日現在の学生数1498人。保健、医療、福祉の3分野を総合的に学ぶ。運動部はサッカー部、軟式野球部などがあり、女子柔道部は昨年4月に新設、現在部員は18人。今年6月、全日本学生柔道優勝大会で団体ベスト8。二塚信氏が理事長と学長を兼ねる。

 ◆内柴正人(うちしば・まさと)1978年(昭53)6月17日、熊本県合志市生まれ。9歳で柔道を始め、国士舘大卒業後、旭化成に入社。04年アテネ五輪男子66キロ級でオール一本勝ちで金メダルを獲得。08年北京五輪で同級2連覇。09年4月に九州看護福祉大の非常勤講師となり、昨年4月に女子柔道部のコーチに就任。同年10月に現役引退を表明し、今年1月に同大の客員教授に就任。160センチ、66キロ。血液型B。