【オーベルストドルフ(ドイツ)25日=阿部健吾】フィギュアスケート元世界女王の安藤美姫(25=新横浜プリンスク)が今日、3季ぶりの復帰戦を迎える。14年ソチ五輪の最終予選を兼ねるネーベルホルン杯は26日に開幕する。招待選手として参戦する安藤は、ソチ五輪の出場資格となる国際スケート連盟(ISU)が定める最低技術点の突破が目標。4月に女児出産も、ここにきてジャンプの調子を上げてきており、第1関門クリアの可能性は極めて高い。
母になった安藤が、いよいよラストシーズンを滑り出す。舞台はドイツ、オーベルストドルフ。人口約1万人という小さな町から、3度目の五輪への戦いの幕を開ける。
ソチへ向けて、1つの焦点は最低技術点を巡る攻防になる。ISUが五輪に出るための最低限のテクニックを求める数字で、ショートプログラム(SP)は20点、フリーは36点。日本連盟では、12月21日に開幕するソチ五輪選考会の全日本選手権までにクリアすることを代表選考の必須条件にしている。10-11年シーズンを最後に公式戦から離れている安藤は、まずISU公認大会でこのハードルを越える必要がある。
最低技術点は本来、“フィギュア新興国”の技術的に劣る選手らを対象に設けられたもので、世界選手権2度制覇の安藤にとって、憂慮する点数ではない。昨年12月の全日本選手権(ISU公認大会ではない)に適用した場合、国内大会は得点が出やすい傾向はあるが、SP20点以下は30人中最下位の1人だけ。フリー36点以下は24人中3人となる。安藤も現行のルールになった04-05年シーズン以降参加したシニア大会で、SPは技術点が20点を下回ったことはなく、フリーも36点を下回ったのは3回のみだ。
4月の出産前後に長期的に練習ができない時期があったが、復帰戦を前に復調著しい。21日のアイスショーでは今季SPを初披露。3回転サルコー、ダブルアクセル(2回転半)を決め、フィナーレでは3回転ルッツも着氷した。この日の前日練習でも好調。黒のウエアで次々と高いジャンプを決め、連続ジャンプにも成功し、20本以上挑戦して転倒はなかった。
問題があるとすれば、どこまでのレベルの演技をするか、だ。元世界女王として招待を受けており、いまできる最高の演技を見せなければ、という気持ちは強い。当然、転倒のリスクも出てくる。最低技術点を確実に超えるために、ジャンプの難易度を落とすなど“守り”に入る選択肢もあるが、どう判断するか。
ドイツに渡る前、安藤は「1つ1つの試合で、いまできる100%を出せるようにしたい」と話していた。この試合で第1関門をクリアすれば、ソチへの視界も広がる。冬の気配が漂うアルプスの麓から、スケート人生の終幕が始まる。
◆安藤がソチ五輪に出場するには
日本の女子シングルの枠は「3」。日本連盟は選手選考方法として、全日本選手権出場を最低条件とする。優勝で決定。2、3位は、GPファイナルの日本人最上位者と合わせて選考。それでも決まらなければ、同大会終了時点での世界ランク日本人上位3人、ISU(国際スケート連盟)シーズン最高スコアの日本人上位3選手から選考する。安藤が全日本選手権に出場するには、予選のブロック大会(関東選手権、東日本選手権)を通過する必要がある。同時に、全日本選手権終了時までにISUが定める五輪出場への最低技術点の獲得も求められ、国際大会での突破が必要。
◆安藤とSPの最低技術点
安藤にとってクリアするのは難しくない。優勝した11年世界選手権では、34・20点をマーク。数々の大会で優勝という“最高点”の演技をみせてきた元世界女王として、シニア大会では平均約30点以上を記録。もし、ジャンプを3回転から2回転に下げる安全策を取ったとしても、転倒の連続などがない限り問題ない得点になる。
◆技術点とは
フィギュアスケートの得点は、ジャンプ、スピン、ステップなどの技術点と、(1)スケーティング技術(2)要素のつなぎ(3)動作(4)振り付けと構成(5)曲の解釈という5つの要素で構成される演技構成点の合計で算出される。
技術点には各演技要素に基礎点が決められている。ジャンプであれば回転数に応じて得点は高くなる。スピン、ステップにも4段階でレベルが設定されている。併せて、各演技要素ごとに出来栄え点(GOE)が配点され、±3点前後以内が増減される。減点としてはジャンプの転倒(2点)などがある。


