世間を騒がせる大相撲の八百長問題に、徹底的なメスが入る。日本相撲協会の特別調査委員会は4日、疑惑が持たれた14人全員に携帯電話と預金通帳の提出要請を決定。通話やメール内容の解析、金銭授受の有無などを調査するもので、さらに疑惑の輪が広がる可能性もある。早ければ6日の日本相撲協会理事会までの決着が見込まれていた調査だが、数週間に及ぶことが確実になった。

 調査委員会が4日夜に明らかにした経過報告は、衝撃的だった。この日、前日に続いて5人の事情聴取を行い、計8人から話を聞いた結果、伊藤滋座長(79=日本相撲協会外部理事)は「現時点までの聴取内容では全容の解明は困難」と判断。14人の携帯電話と銀行預金通帳を証拠資料とするため、今日5日に提出を要請することを決めた。

 調査委員会は資料を求めるとともに、携帯電話の通話内容とメールのやりとりについて解析を行うことを同意させるという。通話の中身までは残らないが、携帯電話事業者には発信日時や電話番号、通話時間などの記録は残る。メールの復元についても「警察の捜査などの場合は2週間程度かかるというから、もう少し時間がかかるだろう」(伊藤座長)と徹底して調べる姿勢を明らかにした。同時に預金通帳で金銭の流れも究明するという。

 八百長をうかがわせるメールの中には、金銭を銀行口座を介してやりとりしていたとみられるところがある。昨年6月1日に春日錦(現竹縄親方)から恵那司に宛てたメールには「悪いけど全然所持金がないから今日は少し立て替えてもらって俺の口座に入れてもらえるかな。三菱東京UFJ(支店名と口座番号)よろしくお願いします」というものだ。

 調査委員会設置が決まった2日、伊藤座長は「意外と6日が最終報告になるかもしれません」と、疑惑力士の処分について楽観的な見方を示していた。「メールの解析はしない」などと「及び腰」ととられる発言もあった。ところが、ここまでの事情聴取で「つじつまの合わないことが多かった」ために、大きく方針を転換。物証を求めてまで全容解明に踏み切った。

 ただし、調査委員会の要請はあくまで「任意」。携帯電話を提出しなくても、罰則等はない。伊藤座長は「協会員として自覚を持って協力してくれると考えている。特に、潔白を主張する協会員は自ら積極的に提出に応じてくれると信じている」と、最後は当人の自覚に任せるという。また、関係者が共同で事案究明を妨害する行為に対しても自粛を要請している。委員会の構成は、昨年の野球賭博問題の時の調査委員会とほぼ同じメンバー。前回は世論から対応に批判もあったため、徹底追及をアピールする狙いもあるようだ。

 調査委員会が力士、年寄など全協会員990人を対象に行ったアンケートは、4日の締め切りまでに979人から回収(11人は病気や休暇などで提出不能)。こちらも、徹底して疑惑を洗い出す。日本スポーツ界を揺るがす八百長問題は、さらに長期化しそうだ。