ロッテ佐々木朗希投手(19)がプロ初の実戦マウンドを3者凡退で飾った。実戦登板は553日ぶり。先発した二木を継いで、6回に2番手として登場。一塁ベンチ前でキャッチボールをし、大きな拍手を受けてマウンドへ向かった。

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ロッテ佐々木朗を最初に見たのは昨年の新人合同自主トレでの投球を映像で見た時だった。18歳でこれだけの球を投げるのかと驚かされた。普通は映像だと迫力が薄くなりがちだが、画面越しにも球の持つ迫力が伝わってきた。捕手側から見た投球ではミットに近づくにつれ、加速しているように見えた。実際は物理的に初速より終速の方が遅いが、錯覚させるだけの圧があった。高卒ルーキーではダルビッシュ以来の衝撃。プロの体として芯ができれば間違いなくレベルアップできる。いつそうなるのか、楽しみを抱かせてくれた。

6回表、ロッテ2番手でプロ初登板し力投する佐々木朗希(撮影・垰建太)
6回表、ロッテ2番手でプロ初登板し力投する佐々木朗希(撮影・垰建太)

結局、去年は試合には登板せず、この中日戦で久々に投球を見た。投球フォームではテークバックに変化が見られた。昨季は肘を支点にして強くしならせるように右腕を振ってきたが、少ししなりを抑えるように右腕全体を振るようになった。本人に確認しなければ分からないが、1年間実戦で投げられなかった何かしらの理由が、フォーム変更につながったのかもしれない。ルーキー時の跳びはねるような躍動感からすれば、やや落ち着いた感じにも映った。

それでも制御しながら最速153キロを投じた。ビシエドから見逃し三振を奪った外角直球は「そこに行ってしまった」ではなく「狙って投げた」という意思を込めたボールだった。阿部の遊ゴロもシュート気味の直球がやや甘く入ったが、詰まらせていた。投手との距離感が打者には想定以上に近く感じるのだろう。リミッターはまだ外していない。現状できる最大値を把握した上で、制御して投げられる賢さも感じた。

6回表中日2死、ビシエドを見逃し三振に仕留める佐々木朗(撮影・鈴木みどり)
6回表中日2死、ビシエドを見逃し三振に仕留める佐々木朗(撮影・鈴木みどり)

昨年はプロとしての体をつくるのが第一だったが、今年はプラスして試合で投げながらスタミナをつけていくことになる。まずは1軍で投げることが目標になる。ただ近い目標も必要だが、その先の目標もしっかり立ててほしい。ロッテのエースから日本のエース。将来的にメジャー挑戦も視野に入ってくるかもしれない。もっとレベルアップしていくために目先の目標を追いかけすぎないで、遠い先を見据えてスケールの大きい投手に成長してほしい。(日刊スポーツ評論家)