殊勲は3ランを放ったマルテだが、最近の1、2番の働きは打線のつながりを考えた上で大きい。この日に限らず、近本が打席で早めに仕掛ければ、中野が粘って相手投手に球数を投げさせる。近本が粘れば、中野が積極的に打ちにいく。そういう「あ・うん」の呼吸がある。あっさりと3つのアウトを取られるような淡泊な攻撃にならず、打線にいい流れができる。

この日も初回に中野がファウルで粘って、9球投げさせた。3番サンズからすれば、数多く球が見られる。相手投手の球の勢い、キレ、絞り球などをじっくり見て、考えをまとめて打席に入ることができる。アウトになったとしても、悪い流れにならない。前半戦はマルテが3番に座り、打つだけではなく、四球も勝ち取り出塁して、打線につながりをもたらした。粘れずに簡単にアウトになれば、相手に流れがいく。

特に中野は新人ながら、後半戦で2番に戻ってから、大きな役割を果たしている。守りも安定しているし、盗塁数トップで機動力も発揮。評価すべき選手だ。近本もヒットこそなかったが、いい打球を打っていた。そういう点では、1、2番が今の打線の生命線だ。

秋山は下半身をしっかり使って、力をボールに伝えていた。1巡目の対戦では糸を引くような直球を軸にし、2巡目から小さく曲がるカットボールやスプリット、カーブで緩急をつける配球に変えて、打たせてとった。前日の西勇、この日の秋山のように、先発が試合をつくって、岩崎、スアレスにつなぐのが今年の阪神の戦いだ。長打を含めた得点能力も昨年より上がっている。残り34試合で首位の位置にいるが、ヤクルト、巨人の負けを願っても仕方がない。足元を見て、自分たちの野球で戦っていくことが、優勝への近道であることは間違いない。(日刊スポーツ評論家)

広島対阪神 1回裏広島2死、西川の中飛を好捕する近本(撮影・上田博志)
広島対阪神 1回裏広島2死、西川の中飛を好捕する近本(撮影・上田博志)