今季から日刊スポーツ評論家に就任した鳥谷敬氏(40)が8日、阪神-広島戦(甲子園)でオープン戦を初評論した。虎は13安打10得点で大勝。3安打の4番佐藤輝、3打点の6番ロハスが目立った一戦、「陰の立役者」に推した打者とは…。【聞き手=佐井陽介】

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阪神を大勝に導いた陰の立役者は5番大山選手ではないでしょうか。3安打を放った4番佐藤輝明選手の後ろで、目立たなくても効果的な働きが光りました。

注目したのは2回無死二塁の場面です。3ボール1ストライクから強振でファウルした直後、内角直球をしぶとく二塁へ転がしました。右方向を意識した進塁打で1死三塁を作り、6番ロハス選手を一気に楽にしました。最低でも安打が必要という状況と、外野フライはもちろん内野ゴロでも1点を奪える状況とでは当然、気持ちの持ちようが大きく違ってきます。大山選手の「つなぎ」が、直後のロハス選手の適時打を生み出したように映りました。

大山選手はオープン戦に入り、やや調子を落としているようです。そんな状態でも勝利を優先して最低限の役割を全うできるから、試合に出続けることができるのでしょう。6回には暴投で最終的に無死二、三塁となった打席で冷静に四球を選び、ロハス選手の2点二塁打につなげています。ロハス選手の計3打点をアシストした姿勢に、主軸としての自覚を感じました。

次の打者を少しでも楽に打たせられるようにする。大山選手のような作業の積み重ねが大量得点を呼ぶものです。この日の6回は大山選手らの3四球が打者1人1人を線でつないだから、2打席目までタイミングが合っていなかった8番江越選手にもタイムリーが飛び出すなど、1イニング7安打8得点の猛攻が生まれたのだと思います。

一方の広島打線には対照的な攻撃がありました。3回1死二、三塁。三塁走者大盛選手の第2リードが大きくなり、梅野捕手に刺された場面です。もともと二遊間が後ろに下がっていて、打者からすれば内野ゴロでも最低OKだったはずが、突然2死二塁となり安打が必要となったのです。楽に打たせてもらえなくなった3番西川選手は結局、空振り三振に倒れました。

この日は両チームのつながり次第で試合展開が大きく変わっていたはずです。タイガース打線には前向きな兆候を感じられました。