佐藤輝明の2戦連発は本人にもチームにも大きな意義があります。新しいフォームでなかなか打球が上がらなかったけど、しっかり自信を持てたでしょうし、4番が打つとチームも盛り上がる。私も経験がありますが、4番の前に塁に出ようと、1、2番はより打席での集中力が高まり、打線の活性化につながります。攻撃陣はいい形で開幕に入れる手応えを得たんじゃないですか。今年の阪神は佐藤輝のチームだと印象づける2戦連発でもありました。

当たれば飛んでいくので昨年までのマン振りはなく、確実性を重視したコンパクトな新フォームはとてもいいと思います。一番の特徴は、頭の上近くにあったグリップの位置を耳元あたりまで下げていること。トップに近い位置で構えているから、振り出しまでの動きが少なく、ボールが見やすい。当然、昨年までの三振かホームランではなく、打率も上がった上で、当たればフェンスも越えます。

まだオープン戦なので、相手からの厳しい投球はほとんど受けていません。昨年苦しんだ厳しい内角攻め、特に高めの真っすぐに対してどうなのかは、これからです。ただ、グリップを下げたコンパクトな打法に変えた分、対応できる可能性は十分あると思います。この日のホームランは甘い球でしたが、そうした失投をとらえる確率が上がることは間違いないでしょう。

同じ左の新人前川にも魅力を感じました。スイングが攻撃的で、日本ハムの近藤に似た中距離タイプですね。左膝にやや重心をかけてバットを立てて構えますが、右足を上げてタイミングを取ってから、45度ぐらいのいい角度でバットが出てくる。動きにムダがなく、直すところがほとんどない完成形に近い打ち方です。あえて言うなら、振り出しからインパクトまでが少し遠回りになっているので、初めて見たプロのスピードボールに遅れている感じでした。そこさえ修正すれば近い将来、すぐ出てくるでしょう。阪神にまた楽しみな選手が現れましたね。(日刊スポーツ評論家)