「ラオウ」が大変身を遂げた。オリックス杉本裕太郎外野手(28)が絶好調をキープだ。実戦はここまで20打数11安打の打率5割5分(25日現在)をマーク。凡退した打席も芯で捉えることが多く、コンタクト率も上昇中。昨年までプロ4年で通算13安打、うち7本のアーチを描いているラオウに一体何が起こったのか…。

「バットを軽くしたんです。870グラムから800グラムに。今のところ結果が出ているので、間違ってないのかなとは思ってます」

新たな発見は1月の広島にあった。例年通り、チームメートの山岡、近藤、榊原らと合同自主トレに参加。ふと借りたバットが大変身のきっかけだった。

「カープの羽月に『バット貸して!』って。それで打ったらオモチャみたいに軽くて。打球速度を測ったら、元々のバットで打ったときと数値が変わらなかった。それなら操作性を重視しようと思って軽いバットを発注したんです」

公称190センチ、102キロの28歳ラオウが、167センチ、70キロの19歳羽月からヒントを得た。体の大きさも、年齢も関係ない。「ただ、打ちたい-」。その貪欲な心が体を突き動かす。

バットのタイプは、先端に重さを感じるトップバランスからミドルバランスに変更。「大振りしない意識で。頭の位置がずれると打てないんで、インパクトの瞬間を大切にしています」。フリー打撃では「前よりも(打球が)飛んでない」と言うが、21日の紅白戦では「今季1号」を放った。「実は…」と漏らすように、バットを指2本分短く持っていてもスタンドに運ぶパワーがある。

怪力だけじゃない。24日の韓国・斗山との練習試合では3安打を放った。7回の打席では内野ゴロか…と思われた打球を放って全力疾走で一塁へ。ベースを踏んだ後は勢い余って転倒…。判定はセーフ。気持ちを前面に出し、勝ち取ったヒットだった。

漫画「北斗の拳」のラオウに憧れ、座右の銘はおなじみのセリフ「わが生涯に一片の悔いなし」で、愛用するグラブにも刻んでいる。

「長打ばっかり求めて、1軍に定着できなかったので…。今は“らしくない”ヒットが増えている。本心はホームランが一番うれしい。でも、ヒットをたくさん打つことは、もっとうれしいんです」

苦しみを知らぬ男に栄光はない。今を必死に生きる。ボロボロになっても、ラオウは戦い続ける。【オリックス担当=真柴健】