「近本選手の中では『捕れたな』と思いますか?」

昨季プロ3年目で初のゴールデングラブ賞を獲得した名手なら-。そう思ったから心境を聞きたくなった。

阪神の沖縄・宜野座キャンプで5日に行われた紅白戦。6回表2死満塁。小幡竜平内野手(21)が中越えの鋭い当たりでランニングホームランとした場面のことだ。中堅を守る近本光司外野手(27)は背走しながらグラブを伸ばしたが、1歩届かなかった。2月上旬の今季初実戦。まだ試運転の中でのプレーにも近本は顔をしかめた。

「あ~、捕れたっすね…。悔しい。自分の中でただその時やるだけなので、紅白戦だからとかそういうのはないし、僕は普通に捕りたくて捕れなかった悔しさがある。それはシーズンでも一緒」

4年目の今季もこの紙一重にトライしていく。オフにはバック宙やバック転に挑戦。「それが野球につながるかどうかまだ分からない」とした上で、「たかがトータルで10回くらいしかしていないですけど、やらないよりはやる方が感覚はつくと思う」。外野手の背走プレーに直結するとは限らない。ただ、日常生活では養いにくい背面の感覚に刺激を入れ、「後方の感覚はすごく面白い」と気付きがあったことも事実だった。

筒井壮外野手守備走塁兼分析担当コーチ(47)も、このギリギリのプレーを見逃していなかった。「紅白戦でもそうだったんだけれど、背走の部分。細かい技術の話だけど、思っているよりもギャップがあるというか、捕れると思っても捕れていない。彼自身、もうちょっと強化していかなきゃいけないと感じていると思う」。死角のない中堅守備の完成へ、目を光らせている。

「4年目なんでね。手綱は緩めすぎないようにしてますけれど、彼の考えをしっかり聞いた上で練習しています」。今キャンプの近本は全体練習後、基本的に“野放し”で、時に筒井コーチとマンツーマンで個別練習に取り組む。「外野の練習はあいつの中でしんどいで有名。でも(本人が)『一番つらいとこ行きます』っていうことでやっている」。自由な時間を与えられているからこそ、その主体性な取り組みが際立つ。

キャッチすれば超がつくほどのファインプレー、捕れなくても責められない-。数センチ先の白球をもぎ取るために、あの日の「悔しい」はこの上ない教材となったはずだ。【阪神担当=中野椋】