ちょっとした変化の中に、意外と深い意味が隠れていたりするが、この場合はどうか。
阪神の沖縄・宜野座キャンプ。第2クールの途中から突然、フリー打撃を行う打撃ケージ内にマットが敷かれた。緑色の人工芝の、よく見るあれだ。ケージ2カ所の左右打席に合計4枚。「だからどうした」と言う人は正しい。他球団では当たり前のことだし、阪神も室内練習場では普通に使っているから。しかし、阪神が宜野座でキャンプを始めて23年、メイン球場にマットを敷いたのは初めてではないか、との証言を得て、正直びっくりした。
何人もの選手が一日中、同じ場所でスイングするから土が激しく掘れていく。阪神園芸が土の配合を変えて固めても限界があった。最後の方に打つ打者は、大きな2つの「穴」と、ふかふかの土に苦労した。そんなことが何年も続いた。
今年も、選手数人から「マット敷いたらダメなんですか?」と声が上がった。打撃担当の小谷野コーチ、上本コーチは異論なかった。念のため、選手に聞き取りをした。「あえて足場が難しい状況で打ちたい選手もたまにいるから」と小谷野コーチ。賛成の選手が多かったため、GOサイン。翌日には手配された。
すべって打ちにくい? 下半身に負担がかかる? 試合と同じように土の上で打つべき? 決してそんなことはないらしい。導入から2週間、人工芝の上で打ち続けているが、マイナス面は指摘されていない。スパイクをはくかどうかは個々に任せているという。
何年もマットが敷かれなかったのは一体なぜだろう。考えすぎか? そこに答えなどないのかもしれない。ただ、「いいものはいい」と迷わず変化していくスピード感は、藤川球児監督(44)が持ち込んだものと、記者は勝手に思っている。ずんずん前に進んでいく新生阪神を予見するかのような、ささやかな出来事だった。【遊軍=柏原誠】




