契約更改を終え、笑顔でポーズを取る広島鈴木(2018年12月24日撮影)
契約更改を終え、笑顔でポーズを取る広島鈴木(2018年12月24日撮影)

新たな年が開けました。めでたい人もそうでない人も、世の中にはたくさんおられるでしょう。すべての人に平等なのは時間だけといいます。この1年、1日、一瞬を大事に生きていきたいと思います。今年もよろしくお願いいたします。

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昨年オフ、おや? と思ったことがありました。広島鈴木誠也が背番号を「51」から「1」に変更すると決まったときでした。どの球団でもそうですが広島でも伝統的に活躍した先人の背番号を継承していく流れがあります。

広島の背番号「1」といえば、やはり前田智徳でしょう。それ以前にも、当然、1番の選手はいましたが近年ではやはり前田のものという感じです。もはや広島を代表する選手になった鈴木がそれを受け継ぐ。なるほど、ということでしょう。

しかし個人的には少しだけ違う感覚を持ちました。昨季まで鈴木がつけていた51番は広島だけでなく、すべての球団で特別なムードを持っていると思っているからです。

言うまでもない、イチロー(マリナーズ)の存在があるからです。いろいろな意見はあるでしょうが、イチローが日本野球を代表する選手なのは間違いありません。

オリックス・ブルーウェーブから51番をつけて海を渡り、マリナーズでも同じ背番号で大活躍しました。ヤンキース時代だけ「31」でしたが、やはり「51」はイチローの番号という印象です。

そこに同じ51番を背負う外野手スラッガーが現れました。しかも名前は「鈴木」という。ええやんか-と思って、これまでずっと鈴木を見ていました。だから今回の変更に「おや」と思ってしまったのです。

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イチローと前田ということになると野球ファンにはいろいろな意見があるでしょう。

イチローが子ども時代、同じ左打ちの広島前田にあこがれていた、という伝説もあります。正直、私は長い取材生活で実際に聞いたことはないのですが。

それはともかく、20年以上前、イチローが世に出てきたとき、こんな思い出があります。

連日、イチローの取材でフラフラになっているこちらに対し、広島担当の経験を持つあるデスク(上司)は「俺は前田の方がすごいと思うけどな!」と、なぜかムキになったりしていました。

2000年に広島担当になったときに前田の打撃の鋭さに接しました。そのキレを見て「故障がなければどんな成長を遂げていたんだろう」という感想は持ったものです。

2人の左打者がともに非凡なのはここで書くまでもありませんし、どちらが好きかもまったく個人の自由。

ファンもそうかもしれませんが取材記者も自分の担当時代に輝いた選手が一番という気持ちがどこかにあるのかもしれません。それはまったく構わないし、私もその気持ちも分かります。

そういう意味であくまで個人的には鈴木誠也は51番のままでもよかったのでは、と思ったりしていました。

イチロー自身もオリックス時代、水面下で「福本豊の7番をつけないか」という話もありましたが、51番のままでした。自分の番号にしたいという思いもあったはずです。

とはいえ「51番といえばイチロー」と定着しているとするなら、さらなる成長を目指す鈴木にとって51番でも1番でもあまり違いはないかもしれません。それならば広島のレジェンドのものを…という判断になっても何もおかしくはありません。

鈴木自身も契約更改の席で新たな「背番号1像」を作り上げる気概を示していて、なんだかいいなと思いました。ここまで書いてきて、なんですが「背番号1」の鈴木を早く見たい気もしてきました。

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さて。そんな鈴木の背番号変更への感想を少し聞いてみたい選手がいました。

阪神の藤浪晋太郎です。

この3年間は不調に苦しみ、金本知憲政権を支えることは正直、できませんでした。2軍に落ちていた藤浪を見守っていた矢野燿大が新監督となった今年こそ「捲土(けんど)重来」の活躍を見せてほしいと思います。

なぜ藤浪に鈴木の背番号変更を聞いてみたいのか。

昨季のシーズン中、鈴木がこちらにこういうふうに言ってきたことがあります。

鈴木 晋太郎はどうしてるんですか? 本当に。いつも思っているんですけど。

言うまでもない鈴木と藤浪は今年25歳を迎える同学年です。その年齢を代表するスターは日本ハムからエンゼルスに移籍した大谷翔平ですが、日本球界ではやはり藤浪のはず…でした。

「何を言うてるん。キミがおるやんか」と鈴木に言いましたが、なおも続けます。

鈴木 いやあ俺なんて。晋太郎は俺たちの時代のスターですから。高校ビッグ3と言われて。大谷(翔平)だけじゃあ寂しいですよ。

ふ~んと思いました。高校球児にはそういう気持ちもあるのかな、と。そんなこともあって藤浪に聞いてみたくなりました。

「誠也、背番号1になったね-。51番のままでもよかったと俺は思うんやけど? どう思う?」

オフのあるタイミングでそんな問い掛けをすると、藤浪はいい笑顔を浮かべて答えました。

藤浪 そうですね。1番、いいんじゃないですか。やっぱり広島にとって1番は特別な背番号でしょうし。誠也はそれを背負うだけの選手だと思いますしね。誠也はいつもこっちを気にしてくれているし、ボクも頑張りますよ。

個人的には違う球団の選手同士が自主トレなどで仲良くするのは、どうなんだろうと思っています。それでも若者が同世代のライバルと真剣勝負をしたい、そのために復調を願うのは大歓迎です。

丸佳浩が巨人に移籍し、4連覇を目指す広島のキーマンとなる鈴木と、阪神が最下位からの反撃を目指すポイントに藤浪。2人のハイレベルな激突を甲子園でマツダスタジアムで今季こそ見てみたいと思います。(敬称略)

鈴木(右)は藤浪の手をぐっと引き寄せて握手を交わす(2017年2月22日撮影)
鈴木(右)は藤浪の手をぐっと引き寄せて握手を交わす(2017年2月22日撮影)