広島で巨人が勝ち、東京で阪神は負けた。9月28日の夜、巨人の優勝が決まった。

神宮での試合後。今年最後のヤクルト戦が終わり、チームは応援してくれた東都のファンにあいさつ。その時、期せずして起きた「岡田コール」。監督の岡田彰布は、これをどう聞いたのかだろうか。

堂々と戦った末の2位だった。崖っぷちに立ちながら、そこから何度も踏ん張った。だが勝負師に慰めはいらない。「優勝できなければ…」。同じようなことが16年前に起きていた。

2008年シーズン。独走しながら最後の最後、巨人にまくられた。すべてが決まった横浜の夜。岡田はコーチを集めて退陣を伝えた。球団には予想外の動きだった。続投して6年目へ。これが覆った。「何とか止めてくれないか」。球団首脳から僕は連絡を受けた。すぐに岡田に連絡した。直に会えたのは午前3時だった。

「胸を張ってもいい2位ではないか」。そう伝えたら、岡田は首を振った。「立派な2位なんてないやろ。あの状況で優勝できなかったのは監督の責任よ」。涙目になりながら、岡田は身の振り方を変えることはなかった。

あれから16年だ。堂々の2位で終わることになった。9月29日、甲子園でDeNAに勝ち、2位を決めた。そのあとの岡田の言葉に注目した。これから先、クライマックス・シリーズ(CS)が待ち構えている。そこを問われ、こう答えている。「できるだけ長く野球したい」といった中身だった。

少なくとも僕には予想外のコメントだった。そもそもCS制度について岡田は否定的な考えを示してきた。最も価値あるものは長丁場を戦った結果。143試合の戦いの値打ち。だからCSは「おまけ」的なイベント。それを隠さずに明かしてきた。

だが今回は違った。「できる限り、長く」というフレーズは何を意味するのか。純粋に巨人へのリベンジの意味なのか。それとも最後は1日でも長く…という意味なのか。さすがに、これは判断が難しい。

10月に入る。この時期になっても、岡田の去就に関して、具体的な報道はない。というより本社、球団は一切、人事について語ろうとしない。まるでかん口令を敷いているかのように、口を閉ざしたままだ。他球団はすでに来季に向けて動き出したところもある。それが10月を迎えようとしていても、水面下の動きは漏れてこない。

そんな中での岡田のコメントが気になって仕方ない。2008年のCS。中日との闘いで、最後に藤川球児がタイロン・ウッズに打たれて敗れた。「あそこで変化球を投げていたら、抑えていたやろな。でも仕方ない。球児で終われたんやから…」。果たして今年のCSはどんな結末を迎えるのか。岡田の去就ももうすぐに結論が出る。【内匠宏幸】(敬称略)

9月28日、ヤクルト対阪神 球場を後にする岡田監督に声援を送る阪神ファン
9月28日、ヤクルト対阪神 球場を後にする岡田監督に声援を送る阪神ファン