鈴木誠也はエエなあ。お立ち台でのインタビューを聞いて思った。「今はヤジばかりなんで。以前のようにファンの方からすごい声援をもらえるように頑張りたい」。本音だろう。
広島3連覇の主役として絶頂期を知るだけに現在のチーム状況は苦しいはず。その気持ちが出た率直なコメントだった。先日、ファン投票で球宴に選ばれた際も森下暢仁の隣で肩をすぼめるようにしている写真をわざわざ球団から発表していた。素直というか、人間味のある選手だ。
その鈴木に1発を食らって西勇輝は1イニング7失点。これはきつい。前カードのヤクルト3連戦で岩崎優、スアレスが3連投している。そしてこの試合は移動ゲーム。さすがにこの日は使えないか。それでなくても打線は湿っている。
ここは西勇に長いイニングを投げてほしい。指揮官・矢野燿大でなくても思うところだろう。それが2回に7失点では。エースと呼ばれる男なら余計だ。
そうは言っても打たれるときは打たれる。負けるときは負けるもの。大事なのは、そこで次につなげるためにどうするか、劣勢の試合をどう生かすか、だ。
独断と偏見で言わせてもらえば藤浪晋太郎を早いタイミングで使ってほしかった。3回、西勇に代打を出し、その裏から藤浪を投げさせれば…と思った。
夏場に投手が苦しくなるのは球界の常識だ。阪神はこの日、投手陣補強のため、二保旭をトレードで獲得した。まずは6日からの9連戦中で先発起用する意向のようだ。
それはいい。だがそれなら藤浪の可能性を探ってもよかったのでは。制球難があるので本来は中継ぎタイプではない。長い回数を投げて力を出す投手だろう。ならば、この試合などいい機会だったのでは。
ロングマンとして好投できれば次につながったかもしれない。8回1イニングを守備のミスがありながら冷静に抑えたところを見て、つい、思ってしまった。同学年の鈴木同様に実は人間味のある男だ。復活すればチームには大きい。
阪神は明らかに失速してきた。鈴木をまねるなら「大声援からヤジばかり」の状況になってきたかもしれない。それでも肩を落とすのは早い。シーズンの最初から最後までうまくいくはずはないのだ。敗戦をうまく使って、流れを切り替えていけるか。それも指揮官の腕の見せどころだろう。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)